SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2015

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【デイリーニュース】 vol.04 『絶え間ない悲しみ』 ホルヘ・ペレス・ソラーノ監督 Q&A

「表現したいことは言葉に頼らず映像で表現しました」

Solano

ホルヘ・ペレス・ソラーノ監督

 

 昨日開幕したSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2015は、いよいよ今日からコンペティション参加作品の上映がスタート。映像ホールの外には開場を待つ人たちの長い行列ができ、映画祭への期待の高さをうかがわせた。コンペティション長編部門上映のトップを飾ったのはメキシコ作品『絶え間ない悲しみ』。

 

 メキシコの片田舎で2人の子どもたちと暮らすチェバは、夫の出稼ぎ中に村の男シルベストレとの子を出産する。だが夫が帰って来ることになり、チェバはアンヘレス・ミゲルに赤ん坊を押しつける。一方シルベストレの義理の娘アンヘレス・ミゲルも、彼の子どもを宿していた……。背の高いサボテンが生えているだけの荒涼とした大地、塩田で作られている塩の白さ、川に流す花の赤。極力台詞を排し、強烈な映像と自然の音のみで人々の悲しみが綴られていく。

 

 本作が監督第2作目となるホルヘ・ペレス・ソラーノ監督は、上映後のQ&Aでも映像へのこだわりを強調した。

 

 「映画はイメージが大切です。言葉のいらない物語を作るのに、映像は大きな助けになっています。表現したいことは役者の動きやカメラワーク、映像で表現しました。各人物には色があり、それはその人たちの歴史、人生を表しています。白はピュア、清潔さ。アンヘレスは行き詰った時に、自分自身を清めるために塩の山に入っていきます。真っ白なところに赤い血が落ちるところは衝撃的です。白い塩田で働くシルベストレの目的ははっきりしていて、飛行機に乗ってどこかへ行きたいのです」

 

 生まれた子どものへその緒をカゴに入れて木に吊るしたり、大きなサボテンの木を祀ったりと、メキシコの独特な風習が印象的に登場する。

 

 「脚本を書く前に、舞台となった土地に住む民族がどのような伝統を持っているかを調べました。へその緒をカゴに入れて木に吊るしたり、土に埋める伝統がありますが、これには子どもにこの地を離れてほしくない、という願いが込められています。しかし『伝統より自分の必要性が大事だ』というセリフも出てきます。多くの人がアメリカに移民し、村々がゴーストタウンになってしまっているメキシコの現状。それが私が象徴したかったイメージです。またその土地の人々は、蝶を魂の象徴だと言います。魂ははっきりした目的なくさまよっている。夫が家庭に帰って来るのは本来嬉しいことですが、チェバにとっては悲しみになる。その時の彼女の魂の象徴なのです」

 

  今年アカデミー賞作品賞を受賞した『バードマン(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(14)のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督や『ゼロ・グラビティ』(13)のアルフォンソ・キュアロン監督など、昨今メキシコの映画作家たちが世界的に注目を集めている。

 

 「メキシコの映画が海外で収益を上げるのは、次の映画の製作につながるので喜ばしいことです。作家としても国外に発信しやすくなる。メキシコ映画には100年の歴史がありますが、海外に出て行くのは年間3、4本。今回のように海外で大勢に人に見てもらい、いろいろな意見をもらうことが製作意欲につながります。時には自分の意図した通り受け取られないこともありますが、その逆もあるので実り多いと思います」

 

 ひとつひとつのシーンが意味するものを確かめながら、もう一度見たくなる作品だ。

 

 『絶え間ない悲しみ』は、7月22日(水)にも14:30から多目的ホールで上映され、ソラーノ監督のQ&Aも予定されている。


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