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【デイリーニュース】 vol.05 『短編①』 Q&A
『きらわないでよ』『オンディーヌの呪い』『これからのこと』
左から『これからのこと』主演女優の坂倉奈津子さん、マキタカズオミ監督。『オンディーヌの呪い』の甲斐さやか監督。『きらわないでよ』の加藤大志監督
国内の若手映像クリエイターの発掘・育成を目的に、2014年から2015年に完成した15分から30分の作品を募集した短編部門。3人の審査員が最優秀作品賞と2作品の奨励賞を選ぶ。最優秀作品賞には次回企画に対し制作の技術的援助をするSKIPシティアワードが合わせて授与され、さらに3本の受賞作には併せて川口市民賞が贈られる。
短編部門は、全134本の応募作品の中から選ばれた12本を3本ずつ、4回に分けて上映する。その第1回目の上映作品は『きらわないでよ』『オンディーヌの呪い』『これからのこと』の3本。
上映後、Q&Aの壇上には右から『きらわないでよ』の加藤大志監督、『オンディーヌの呪い』の甲斐さやか監督、『これからのこと』のマキタカズオミ監督と主演女優の坂倉奈津子さんが並んだ。
1本目はいじめを受ける男子生徒が気になる女子中学生を描いた『きらわないでよ』。女子中学生役の一柳みのりさんについて瀧沢ディレクターから「どうやって探したのですか?」と聞かれ、加藤監督は「『中学生でいい子いないかな』とあちこちで聞いていたんですが、なかなか主役の女の子は見つからなくて、たまたま先輩が「加藤、女子中学生探してたよな」と見せてくれた写真に一目惚れしまして。すぐ事務所に連絡して出てもらいました」と明かす。この作品、いじめられている少年は昆虫好きという設定で、それが2人を近づけるきっかけになる。ところが「虫、苦手なんですよね」と加藤監督。「人間以外のものは動きが予測できないんで撮影が大変でしたけど、中でもナナフシは大変で。ネットで注文して届いてから撮影するまで10日間くらい飼ってたんですが、いなくなっちゃったんですよ。傘立てに擬態してたんです(笑)。あわてて捕まえたんですけど怖かった……、虫嫌いなんで(笑)」と会場の笑いを誘った。
『オンディーヌの呪い』には、ベテラン俳優・長塚京三と遠山景織子が出演。妻の浮気を疑う夫の葛藤を新作能「オンディーヌの呪い」に絡めて描くドラマ。「能」というモチーフが、時間軸を行き来しながら、生と死、嫉妬、人の表裏、現実と夢幻などのテーマを結びつけていく構造になっている。
「まず”呼吸”をテーマに何か作りたいと思っていて、睡眠時無呼吸症候群のように眠ると呼吸が止まってしまう病気のことを「オンディーヌの呪い」と呼ぶことを知りました。新作能で「オンディーヌ」という演目の公演があったのでいつか使えるかもと一年ほど前に撮影していたんです。こちらは三角関係とか嫉妬というのがテーマになっています。それで夫婦の間の違和感、信じていることが事実なのか、嫉妬していることは思い込みなのか事実なのか、さらに言えば生きているのか死んでいるのかわからない能の死生感などを加えて、時空を行ったり来たりして描いてみました」と甲斐監督。ここで会場から企画者の助け舟が。「能面というのはユング心理学で言うペルソナにもあるように隠れた人格を表すものであり、内面を表象するものなんです。人にはいくつかの人格があって現実に見えているのはその一つに過ぎない。能面はその内面だけを見せるものと考えて、それを使って表現できないかなと考えた企画なんです」。「能」に対するとっつきにくさからか、質問も答えもそこに終始してしまった感のあるQ&Aであったが、企画とプロットの挑戦性に共感して出演を快諾してくれたという長塚京三の厚みのある演技が見ものであることは間違いない。
『これからのこと』は、身近な日常の中に人生のターニングポイントを迎えた若いカップルの一晩を描く作品。マキタ監督と主演の坂倉さんの出会いは7、8年前。「芝居でお会いして、なんやかんやで映画にも出ることになりまして」と気心のしれたところをうかがわせる。マキタ監督は平田オリザの劇団「青年団」演出部所属の演劇人でもある。「ちょっとシリアスな物語にかかっていて、ちょっと気晴らししたいなと思って、身近な話を知り合いを集めて撮ってしまいました」と監督。同棲相手から突然妊娠したと写メが来たというのが身近な話、というのは監督の実話!? と思いきや「友人のことなんですけど、もし僕自身にこういうことがあったら、あ、僕結婚しているんですが、逃げるかもなと思って(笑)」。さて、映画の主人公は逃げたのか、逃げなかったのか……。それは見てのお楽しみに。
次回の『短編①』の上映は、7月21日(火)17:00から映像ホールで行われる。『きらわないでよ』の加藤大志監督、『オンディーヌの呪い』の甲斐さやか監督、『これからのこと』のマキタカズオミ監督と主演の芝博文さんのQ&Aも予定されている。