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【デイリーニュース】 vol.06 『ガーディ』 ガブリエル・シャムーン プロデューサー Q&A
「互いの違いを受け入れ、認め合うことこそこの映画のメッセージです」
プロデューサーのガブリエル・シャムーンさん
長編コンペティション部門出品作品『ガーディ』は、アカデミー外国語映画賞レバノン代表にも選ばれたハートウォーミングな作品。
音楽教師のレバは幼なじみのララと結婚し3人の子供に恵まれる。末の息子ガーディはダウン症で、毎日父の歌声を真似て窓辺で大声を上げるため、近所の住民たちは彼は悪魔だと騒ぎ始める。困ったレバは「実は息子は神の言葉を伝える天使だ」と嘘をつき、嘘を真実に見せるための涙ぐましい努力をすることに。やがて努力は報われ、町の人々もガーディを天使と崇めるようになる……。
上映後のQ&Aにはプロデューサーのガブリエル・シャムーンさんが登壇し、「今日は主演俳優であり脚本家のジョージ・カッバス、そして監督のアミン・ドーラに代わって皆さんのご質問にお答えしたいと思います」と挨拶した。
父親レバを演じたジョージ・カッバスは、本作の脚本も手がけている。作品のなりたちについて、シャムーンはこう説明する。
「レバノンの大スターであるジョージ・カッバスと会い、一緒に仕事をしたいねという話になりました。数カ月後、カッバスが物語のアイデアを持ってきて、私が気に入ったと言うと、今度は脚本を書いてきました。私がプロデュースすることにして、脚本がほぼ完成した頃に監督のアミン・ドーラに読ませたところ、彼も大変気に入ってこの映画のプロジェクトが始まったのです。ガーディ役のキャスティングのためにダウン症児のための施設や学校を回り、10、11歳の少年100人以上に会いました。監督のアミン・ドーラは見た瞬間に彼だと思ったそうです」
ロケを行ったのは、レバノンのバトルーンという町。撮影中はこの映画のエピソードに出てきそうな困った人物にも遭遇したとか。
「バトルーンはカッバスの出身地でもあります。地元の人たちは、自分たちの映画のように思って温かく応援してくれました。ただ、全員が好意的だったわけではありません。近所に大工がいて、暇そうなのに撮影のおかげで仕事にならないと文句を言ってきて、『アクション』と声がかかると途端にのこぎりで音を立て始めたり(笑)。『少しの間やめて下さい』と言いに行くと『何をくれるんだ』と言うのでウイスキーやお金を渡しました」
完成した映画は地元だけでなく、レバノン国内で興行的にも批評的にも非常に高い評価を受けたという。
「国内では4カ月のロングランになりました。また、劇場で映画の上映後に拍手が起こったんです。映画祭でもない普通の映画館で拍手が起きるのは非常に珍しいことです」
レバノンは過去に長いあいだ内戦や戦争が続いた国だが、確かに拍手したくなるほどこの映画には幸福感が満ちている。
「この映画の重要なメッセージは、互いの違いを受け入れるということです。少年はダウン症であり、彼を天使に仕立て上げるチームを構成している1人は黒人、1人は同性愛者、1人は知能は高くないけれどもある面では優秀な人物で、人と違うと思われている人たち。レバノンには18の異なる宗教コミュニティがあり、違いを受け入れる姿勢と同時に敵意も存在します。違いを認め合うことこそ、この映画で伝えたかったこと。レバノンの戦争は終わりましたが、すぐ隣のシリアやイラクでは今も戦いが続いています。平和と寛容はこの映画のテーマなのです」
『ガーディ』は、7月22日(水)にも17:30から多目的ホールで上映される。シャムーンさんのQ&Aも予定されている。