SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2015

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【デイリーニュース】 vol.07 『短編②』 Q&A

『あの残像を求めて』『空っぽの渦』『不旋律のソナタ』

左から『不旋律のソナタ』の岡元雄作監督、『空っぽの渦』の湯浅典子監督、『あの残像を求めて』主演女優の加藤紗希さんと隈元博樹監督

 

 『短篇②』は、廃品回収の会社に勤める女の子が初老の同僚に8ミリカメラをもらい、さっそく撮影し始める『あの残像を求めて』、出会い系サイトのサクラのバイトをする孤独な女子高生を描く空っぽの渦』、長年一緒に暮らしながら結婚していない高年カップルの物語『不旋律のソナタ』の3本。いずれも今の社会に暮らす人々の孤独に焦点を当てるドラマである。

 

 SKIPシティ国際Dシネマ映画祭は、デジタル映画の映画祭。そこに8ミリフィルムをモチーフにした映画とあえてミスマッチで挑んだ『あの残像を求めて』の隈元博樹監督。主演女優の加藤紗希さんとQ&Aに臨んだ。
 「この作品は2013年の暮れから14年にかけて撮ったのですが、これを撮ろうと思ったのは、富士フイルムが13年の9月に8ミリフィルムの現像をやめるという話を、8ミリで自主製作をしている人に聞いたのがきっかけです。彼はフィルムの自主現像も出来る人で、それならもっと作ろうよ、という話になり、8ミリ映画にまつわる話を作りました」。思い入れの深い監督に対して主演の加藤さんは、「一番大変だったのは……寒かったです(笑)」と一言。舞台は東京の郊外という設定だが、加藤さんの演ずる奈美は関西弁。それについての質問に、「あれは三河弁なんです。このヒロインはその土地に根付いた人じゃなくて違うところからたどり着いた人がいいなと思って。それを一番わかりやすく描くなら方言だろうと。ならば、加藤さんの出身地の三河弁がいいだろうということになり、僕はわからないので加藤さんと彼女のお母さんに直してもらいながらセリフを書いていきました」。ホームムービーを撮ることは記憶を記録するということ。かつて8ミリフィルムでホームムービーを撮っていた時代とは、人のつながりがまったく違う今という時代を考えさせる作品にもなっている。

 

 『空っぽの渦』は、出会い系サイトで返信を書き込むバイトをしている女子高生の話。湯浅典子監督は、「今の10代の青春を描きたいと思って。10代の頃っていろいろ渦巻いているけれど空っぽで、でも渦巻いている(笑)。そんな感覚を忘れないうちに撮っておきたいなと。彼女たちとはだいぶ年は違いますけど(笑)」と語る。
 ヒロインのバイト先はいかがわしいキャバレー風の内装。取材をしたのですかと聞かれて、「2年ほど前、会社を辞めた時に3カ月ほどやった、テレホンアポインターのバイトを参考にしました。出会い系サイトでバイトしたことのある男性のスタッフにもいろいろ聞きました。ただ場所的には混沌とした感じが欲しかったので、“高円寺のキャバクラを居抜きで借りて事務所にしている”というイメージでロケ場所を探しました。普通は雑居ビルの一室でデスクを並べてやっているんだそうです(笑)」。物語的にもテーマ的にもシリアスな作品だが、映像的には動きや奥行きなどに工夫を凝らしている。
 ヒロインが出会う人々の造形も面白い。「息を詰めている感じの話なので、どこかで息を抜けるところを作りたくてパントマイムのエピソードをいれました。最初は猫を出すのはどうかって言われたんですが、人間でやりたかったのでパントマイムにしました。人間なのに人形のようで、人形のようなのに人間で、自分が見られている視線に苦しくなるという話を聞いて、その感じも入れられればいいなと思ったんです」。GoProを使って水中撮影をしたり、ドローンにつけて空撮をしたり、閉塞感のただよう物語を映像的にも解放する努力をしている。

 

 『不旋律のソナタ』は、実はPR映画なのだそう。岡元雄作監督は、「スポンサーである八王子の日本閣という結婚式場からの、結婚したくなる映画という注文で作ったのがこの映画です。ほかにはほとんど縛りはなくて自由に考えていたところ、最近50代60代の結婚の需要が高まっているというニュースを聞きました。この年代の人だとマイナスなこともあるだろうし、それなのにどうして結婚したいのかなという疑問から始まった物語です」と話す。
 すでに熱烈なファンもいるよう。会場最前列に座った女性からの「主演のお二人の出演の経緯を教えてください」の質問に、「頑固な指揮者役は升毅さんがいいなと思って企画書を送ったらOKしていただけて。それから朝加真由美さんが同じ事務所だと知り、実は朝加さんをイメージしてヒロインを書いていたと正直にお伝えしたら、出てくださることになりました。朝加さんからは自分に置き換えて考えるところがあるのよね、なんて言っていただけました」と丁寧に答えていた。
 結婚式場は確かに大切なシーンで出てくるものの、ほとんどは関係ない場所で撮られている。それでもよしとするスポンサーの太っ腹に加え、まだ若い監督が中高年の結婚の背景をしっかりつかんで表現している。

 

 次回の『短篇②』の上映は、7月21日(火)10:30から映像ホールで行われる。『あの残像を求めて』の隈元博樹監督、『空っぽの渦』の湯浅典子監督、『不旋律のソナタ』の岡元雄作監督のQ&Aも予定されている。


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