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【デイリーニュース】 vol.09 『モンテビデオの奇跡』 ドラガン・ビエログルリッチ監督 Q&A
内戦で6つに分裂した旧ユーゴ各国で大ヒットしたセルビア発W杯映画
『モンテビデオの奇跡』のドラガン・ビエログルリッチ監督
長編コンペティション部門の3本目として、セルビア映画『モンテビデオの奇跡』が映像ホールで上映され、終映後のQ&Aでドラガン・ビエログルリッチ監督が登壇した。
1930年、サッカーのワールドカップ第1回大会であったウルグアイ大会での旧ユーゴスラビア代表の活躍を描いた娯楽作。今年の米アカデミー賞外国語映画賞のセルビア代表にも選ばれた。
35年以上俳優のキャリアがあるビエログルリッチ監督は情熱的に語る。「これはダークな作品だったり、社会的に深い問題を抱えたような典型的な東欧映画ではありません。長年、俳優をする中、自分が映画を作るなら、楽観的で希望のある作品を撮ってみたいと思っていました。愛、友情、夢……。普通の人間が経験することを事実に基づいて描いていますが、一方、寓話的でもあります。若者がウルグアイの首都モンテビデオでサッカーに情熱をかける物語です」
自身もサッカーの大ファン。旧ユーゴの選手も数多く活躍するJリーグにも関心があるという。「(旧ユーゴである)セルビアにとって、3位というのは最高の成績でした。最近のセルビアサッカーは芳しくありませんが、レッドスター・ベオグラードもUEFAチャンピオンズカップ(1990−91)で優勝してますし、日本の名古屋グランパスでも活躍した(ドラガン・)ストイコビッチもここでプレーしていました。ストイコビッチが最近、名誉ある賞(旭日小綬章)を受賞したということも知っています」
ワールドカップが舞台ということで、国際色豊かな俳優が出演。『マンボ・キングス/わが心のマリア』のアーマンド・アサンテがユーゴ代表の心を揺さぶる米国人スカウトマン役を演じている。「俳優は主にセルビア、スペイン、フランス、アメリカの4カ国から来ています。違う言葉の人々を指導するのは難しかった。でも、大きなチャレンジであると同時に、インスピレーションでもありました。とはいえ、ユーゴは6つの国に分裂したわけですから、それ以上の国の人々がいたわけです」
大観衆のスタジアムで展開される対ブラジル戦、対ボリビア戦、対ウルグアイ戦のシーンは大きな見どころだ。「ドラマ部分はインスピレーションによるものですが、試合は全て歴史的な事実にもとづいています。俳優は2つの基準で選びました。まず、演技の力量があること。それに、サッカーができるかどうか。選手役の俳優には3カ月前からトレーニングを積んでもらいました。とはいえ、サッカーシーンは困難が多いものでした。CGもこれまでのセルビアではない規模で使っています」
この作品はセルビアを始め、旧ユーゴ諸国で大ヒット。テレビシリーズも製作された。「ユーゴは20年以上前に、内戦によって6つの国に分裂してしまった。セルビアでは、サッカーはかつてほどは芳しくないので、もう一度、成功して欲しいという思いがあるのではないか、と思います。不幸な過去を乗り越えての結果かどうかは分かりませんが、私自身はユーゴで育ったと思っていますから、旧ユーゴの各国でヒットしたことをうれしく思っています」
次回『モンテビデオの奇跡』の上映は、7月22日(水)11:00から多目的ホールで行われる。ビエログルリッチ監督のQ&Aも予定されている。