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【デイリーニュース】 vol.16 『君だってかわいくないよ』 マーク・ヌーナン監督 Q&A
「矛盾や、複雑さを持つ人間に興味があるのです」
『君だってかわいくないよ』のマーク・ヌーナン監督
母を亡くした11歳の少女と、その叔父の共同生活を繊細なタッチで綴った人間ドラマ『君だってかわいくないよ』。本国アイルランドでの公開を7月24日に控える多忙のなか、マーク・ヌーナン監督がゲストとしてQ&Aに登壇した。
主人公は姪と叔父。睡眠障害を抱え、治療薬が手放せないため学校で勉強することも困難な少女ステイシー。その叔父で、ステイシーを養育することを条件に、刑務所から恩赦を受けたウィル。2人とも、自分の気持ちを素直に表現することが苦手で、互いに皮肉や衝突を繰り返しながらも、徐々に打ち解け合っていく……。
ウィルに扮するのは、テレビドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のピーター・ベイリッシュ役で知られるエイダン・ギレン。一方、ステイシー役には、本作が初の大役となるローレン・キンセラが抜擢された。
「新人監督である私の映画にエイダンが出演する条件として、『ステイシー役には、単なる普通の子役ではない、大人の俳優に引けを取らない子を起用してほしい』と要求されました。実際、ステイシーは非常に複雑なキャラクターで、うれしいときに笑う、悲しいときに泣く、といったタイプの少女ではなく、悲しみを胸の内に秘めるということを若くして知っている人間です。キャスティングの最後の最後でローレン・キンセラを見つけることができました。まだ無名ですが大きな才能を秘めた子で、撮影の初日にエイダンも『ローレンは素晴らしい女優だね!』と、絶賛しました」
姪のステイシーを案じながらも、薬や酒につい手を出してしまう、優しくも脆い心を抱えたウィルについて監督はこう説明する。
「ウィルはいわゆる依存症ではなく、逃げる男なんです。たしかに彼は女性や子どもに親切で、優しい男です。であると同時に、自分の現実に直面することができない。優しさと弱さが両方ある、ある意味でとても人間的な人物とも言えます。そういう矛盾や、複雑さをもつ人間に興味があるのです」
彼らが新生活を始める土地は、淋しく、荒涼としているけれど、どこか温もりも感じられる田舎町だ。
「アイルランドの首都ダブリンからだいぶ離れた、オファリー州で撮影したのですが、ここは私の生まれ故郷なんです。劇中で描かれているように、雇用も少なく、さびれて、もの悲しくて、静かで、そして美しい町です。この物語の雰囲気にぴったりだと思い、この土地でないと出せない雰囲気を映画の中に収めたかったのです」
映画の結末は、見る人によって解釈がいかようにも分かれるであろう余韻を含んでいる。
「その後の2人がどうなったのかは、観客それぞれの解釈に委ねたいと思っています。『ラストシーンの後、彼らはどうなったのだろう?』と、エイダンとも話し合ったのですが、私と彼の解釈は正反対でした(笑)。作った側の私たちですら解釈が異なるのですから、観客の皆さんに『こう見てください』と、押しつけるわけにはいきません。自由に見て、なにかを感じとっていただけたら、なによりの喜びです」
次回『君だってかわいくないよ』の上映は、7月25日(土)17:00より、映像ホールで行われる。