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【デイリーニュース】 vol.21 『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ! 戦国大合戦』
原恵一監督トークショー
これまでにない「クレヨンしんちゃん」映画を作りたかった
『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ! 戦国大合戦』の原恵一監督
戦国時代へタイムスリップしたしんのすけと野原一家が大合戦に巻き込まれる、劇場版『クレヨンしんちゃん』シリーズでは異色の時代劇『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ! 戦国大合戦』。7月24日(金)の上映終了後に、原恵一監督を招いてのトークショーが行われた。
原監督にとっては、本作は劇場版『クレヨンしんちゃん』を手がけることになった最後の作品であり、「ハードルの高そうな時代劇を、どうしてもやってみたかった」と語る。
「本作品の前作にあたる『モーレツ!オトナ帝国の逆襲』で、正直なところ、自分が『しんちゃん』でできることはやり尽くしたな……と思ったんです。ところが、興行的な数字も評価も高かったので、もう一本監督をすることになり、どうせやるのなら大変そうなことに挑戦してみよう! と考えて、じゃあ時代劇だ! ということになって」
公開当時、戦国時代の戦いの様子のリアルな再現と、アニメーション映画の常識をゆさぶる結末が大きな話題を呼び、本作品は文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞を受賞した。
「実写映画で合戦場面を撮影すると、きっととても大変だと思います。しかし、『しんちゃん』だったらまだ、どんな激しい場面でも表現できる余地があるんじゃないかな、という目算はありました。いろいろな人にシナリオ読んでもらったのですが、あのラストシーンに抵抗を示す人も、実は少なくなかったのです。ですが、この作品は自分にとって最後の「しんちゃん」だという思いがあり、加えて、戦いを扱っている以上、安易にハッピーエンドとはしたくなかったのです。大人も子どもも、観てくれた人全員に衝撃を与えたい、そんな気持ちでああいう結末にしました」
劇場版『クレヨンしんちゃん』シリーズの二大傑作と呼ばれる『モーレツ!オトナ帝国の逆襲』と本作は、自身のキャリアの中で大きなターニングポイントにあたる、と原監督は振り返る。
「それまでは、「クレヨンしんちゃん」というすでに完成されている作品の中に、いろいろなところから借りてきたものを落とし込んで映画を作ってきた……という感じが拭えませんでした。『オトナ帝国』で初めて、自分のオリジナルを作ることができた、と実感しました。一度そういう地点に到達したら、もう戻れなくもなるわけです。本作はさらに、これまでにない「しんちゃん」を作ろうと、そして「しんちゃん」ともお別れしよう、と決意して臨みました」
以降、原監督の躍進は目覚ましい。アニメーション映画『河童のクゥと夏休み』(07)『カラフル』(10)、実写映画『はじまりのみち』(13)と、新作を発表するごとに高い評価と大きな反響を呼んでいる。
今年6月に全国公開された最新作『百日紅~Miss HOKUSAI~』(15)は、世界最大のアニメーション映画祭として名高いアヌシー国際アニメーション映画祭で、長編部門審査員賞を受賞した。アニメーション映画監督として、不動の地位に立った感があるが、「もともとアニメ映画の監督になろう! と思っていたわけではなかった」と言う。
「アニメの演出に携わりたくてこの世界に入りましたが、社員監督として『クレヨンしんちゃん』を任され、仕事をひとつひとつ、やっていくうちに、気づいたら映画を作ることのできる環境になっていました。フリーランスになった現在は、一本の映画につき2年から3年かけて取り組むスパンになっているので、この作品と最後まで付き合いたい、という気持ちが持てるかどうかが、仕事をする上での判断基準になっていますね」
最後に、観客へのメッセージを伝えた。
「もしも、この映画がおもしろいな、と思ったら、ぜひ『モーレツ!オトナ帝国の逆襲』や、ほかの『クレヨンしんちゃん』シリーズもご覧になってみてください。テレビ版よりも広いスケールのしんちゃんと野原家の冒険を楽しんでいただけたら、幸いです」