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【デイリーニュース】 vol.23 『牝狐リザ』 カーロイ・ウッイ・メーサーロシュ監督 Q&A
「日本の音楽だけでなく文学、映画、食べ物も大好きです」
『牝狐リザ』のカーロイ・ウッイ・メーサーロシュ監督
長編コンペティション部門出品作『牝狐リザ』は、日本マニアの孤独な女性の周囲で次々と起こる不思議な殺人事件を、ユーモアと音楽たっぷりに描くハンガリー映画。本国では過去5年間で2番目という大ヒットを記録、何度もリピートする熱心なファンも多いとか。
日本大使の未亡人の世話をするリザは、日本の小説とかつて一世を風靡した歌手、トミー谷の大ファン。トミーは幽霊となって時々彼女の前に現れ、2人は一緒に歌ったり踊ったり楽しい時を過ごす。だがリサの30歳の誕生日に未亡人が亡くなって以来、彼女の周りで謎の死が相次ぐことに……。
カーロイ・ウッイ・メーサーロシュ監督は、これまでに短編や200本以上のコマーシャルを手がけており、本作が長編デビューにあたる。上映後のQ&Aではまず、完成までに8年かかったという本作の製作について語った。
「資金集めに5年、実際の製作に3年かかっています。特殊効果が300~400カ所あるので、ポスト・プロダクションにかなり時間がかかりました」
かつての大スター、トミー谷(の幽霊)は、デンマーク人の母と日本人の父を持つデヴィッド・サクライが演じている。
「キャスティングのために日本でも15人ほどの俳優に会ったんですが、ギャラが安かったせいか(笑)、役に必要なエンタテイナー的要素を持った人を見つけられませんでした。そこでデンマークでアクション俳優をしていた彼に決めたんです。彼はアクションやスポーツは得意でもダンスは初めてで、物凄く熱心に練習してくれました」
トミー谷の歌う日本語のオールディーズのような楽曲は、すべて映画のためのオリジナルだとか。
「もともと『いい湯だな』など日本の60年代の曲が大好きで大コレクションを持っています。でもそれらを映画に使うにはお金がかかり過ぎるので、ハンガリー人の作曲家に曲を作ってもらい、ブダペスト在住の日本人に詞を書いてもらいました。歌っているのは作曲家本人なんですよ。サントラの曲はiTunesで購入できます(笑)」
音楽もさることながら、リザに好意を抱く男性が次々に死んでいくという設定も、日本の伝承をもとにしているという。
「もともとはハンガリーの舞台劇だったんですが、那須国際短編映画祭に参加したときに聞いた狐の伝説(那須に伝わる「九尾の狐」と「殺生石」)の要素を加えました。来日するのは今回で5回目ですし、音楽だけでなく日本の文学、映画、食べ物も大好きです」