ニュース
【デイリーニュース】 vol.25 クロージング・セレモニー(表彰式)開催
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2015 コンペティション部門受賞結果発表!
長編コンペティション部門最優秀作品賞は『ビヘイビア』
7月18日(土)から9日間にわたって開催されたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2015。今年のコンペティション部門には74の国と地域から684作品の応募があり、その中から選び抜かれた長編12作品、短編12作品、アニメーション14作品が上映された。最終日の26日(日)には、クロージング・セレモニーと表彰式が行われ、SKIPシティ国際映画祭実行委員会会長の上田清司埼玉県知事、八木信忠総合プロデューサー、瀧沢裕二映画祭ディレクター、SKIPシティ国際映画祭実行委員会副会長の奥ノ木信夫川口市長らのあいさつに続き、各賞の受賞作・受賞者が発表された。
■アニメーションコンペティション部門
最優秀作品賞
『夢かもしれない話』 朴美玲監督
「日常の仕草に登場人物たちの生きてきた時間が見事に描かれていて説得力がある」と和田敏克審査委員長に評された朴美玲監督は、セレモニーへの出席が叶わず、監督から届いた喜びのコメントが読み上げられた。
「とても驚きました。同時に大変嬉しく思っております。本当にありがとうざいました」
奨励賞
『女生徒』 塚原重義監督
「印象的な作品がすごく多い中、賞をいただけてとても光栄です」
塚原重義監督
『息ができない』 木畠彩矢香監督
「この作品を通して何か感じていただくことができたら、伝えることができたらいいなと思います。ありがとうございました」
木畠彩矢香監督
審査員特別賞
『幕』 水尻自子監督
今回は「正賞の3作品に収まり切らなかったので(和田敏克審査委員長)」、急遽審査員特別賞が設けられ、和田敏克審査委員長が「触感をアニメーションでここまで表現できる唯一無二のアーティスト」と評した水尻自子監督の『幕』が受賞した。
「和田さんからもったいないようなコメントをいただきましたが、私も自分の作品を言葉にできない不思議なものだと思っているので、このような賞をいただけてとても嬉しく思います」
水尻自子監督
アニメーション部門の和田敏克審査委員長は、「ノミネート作品はどれが受賞してもおかしくないものばかりでした。ここ十数年でデジタルがパーソナルなツールとして使われ始め、アニメーションがとても身近な表現になりました。これまで見たことのない作品が次々と生まれています。この映画祭から、これから世界に向けて次の作品を作ってほしいという期待を込めて受賞者を決定しました」と総評した。
■短編コンペティション部門
最優秀作品賞
『私はアーティスト』 藪下雷太監督
桝井省二審査委員長から「短編の長さの中でしか表現できない作品」と評された藪下雷太監督。
「今年31歳になるんですが、30年間賞には縁がなく、『どうせ俺なんて』という卑屈な根性で作った作品でもあったので、こういう大きな賞をいただけて嬉しいです。この作品を作ったことでキャストや映画祭で多くの人たちと知り合えたことも嬉しく、本当に映画を作っていて良かったなと思いました。これを励みに頑張っていきたいと思います」
藪下雷太監督
奨励賞
『オンディーヌの呪い』 甲斐さやか監督
「審査員、映画祭、映画祭スタッフ、観客の皆様、そして映画のスタッフとキャストの皆様のおかげです。ありがとうございました。また次の作品の励みにしたいと思います」
甲斐さやか監督
「私自身はこの作品を作ることで何かが伝わればいいなと思い、その強い部分だけを何とか研いでいって作ったつもりです。相当不安なところが多々ある中で、こういう認めていただける場をいただいたことに感謝しています」
湯浅典子監督
短編部門の桝井省志審査委員長は、「10年位前から日本映画の現場でも女性スタッフが増え、これからは女性が中心になっていくだろうと思っていました。奨励賞の2本が女性監督の作品であることは嬉しく、楽しみに思います。薮下監督と同じく、私も映画の仕事に就くまで賞には縁がない人間で、世間から認められないもやもやを経験しました。でもそれが作品を作るエネルギーになってきたことも間違いないので、今回賞にもれた方たちもめげずに頑張ってほしいと思います」
■長編コンペティション部門
最優秀作品賞
『ビヘイビア』 エルネスト・ダラナス・セラーノ監督
今回、映画祭への来訪がかなわなかったエルネスト・ダラナス・セラーノ監督は、受賞の知らせを受け、メッセージを寄せた。
「私は、映画で描かれているような境で育ちました。幼い頃、子どもたちが『座頭市』に夢中になっていたことを思い出します。シリーズ全作品を何度も何度も繰り返し見たものです。成長し、小津や黒澤作品と出会い、ますます日本文化に魅了されるようになりました。このたび、映画が遠く離れた場所への架け橋となり、映画を通して共通点を感じることができたことをとても嬉しく思います。スタッフ、出演した子どもたちに代わり、お礼を申し上げます。子どもたちの多くは演技の経験もなく、映画で描かれたような生活をしています。そんな彼らなくしてこの作品が成立することはありませんでした。ありがとうございました」
監督賞
ホルヘ・ペレス・ソラーノ監督 『絶え間ない悲しみ』
「映画祭に参加できるだけで大成功。参加して、新しい土地を知り、より感動が大きくなり、できれば何か賞が欲しいと思うようになるものです。もし賞をもらったらどういうスピーチをしようか考えていましたが、最終的にはお礼の言葉しかありません。ありがとうございます。私たちが日々やっている仕事に価値があるんだと実感する機会となりました」
ホルヘ・ペレス・ソラーノ監督
脚本賞
『君だってかわいくないよ』 マーク・ヌーナン監督
映画祭会期中に本国で映画が公開されたマーク・ヌーナン監督は、受賞の報にビデオメッセージを寄せた。
「脚本執筆には4年間かかりました。それをこのような形で認めていただけたことを嬉しく思います。審査員、映画祭関係者、観客の皆様と、アテンドの美穂子さん、そして本作のスタッフ、キャストのにも感謝致します。本作品のプロモーションのためにアイルランドに戻りましたが、大変嬉しく思っています」
マーク・ヌーナン監督
SKIPシティアワード
『あした生きるという旅』 内田英恵監督
「ドキュメンタリーはほかの部門も含め、1本しかありませんでしたし、賞をもらえるなんてまったく思っていませんでしたので……。まずはノミネートいただいたことに感謝。この作品が作れたこと、出会えたことを嬉しく思っております。今回の賞がこれからの活動をサポートしてくださるという賞なので無駄にしないように次に活かしていこうと思います」
内田英恵監督
長編コンペティション部門の堀越謙三国際審査委員長は、「世界中で毎年、3000本から4000本の映画が作られているのではないかと思います。いい映画だと言われるのはそのうちの1割足らず。そんな中からこの映画祭に(クオリティの高い)作品を持ってくるのは大変な作業だと思います。皆様にはそのことをまずご理解いただきたい。長編部門では、4つの賞を与えてほしいということでした。その選出に苦労することがなかったのは、この映画祭のクオリティを証明していると思います。過去に何回か映画祭の審査委員を務めましたが、賞の該当作がないこともありました。よい作品をラインナップしてくれたことに感謝します。
エンターテインメントは、映画祭での受賞に不利なジャンルです。なぐさめるわけではありませんが、例えば、フランス映画『サンタ・クロース』は、家族全員で楽しめる映画。まるでハリウッド映画のようだったセルビアの『モンテビデオの奇跡』もエンターテインメントとしての演出力は素晴らしかった。賞を逃したのは同じ理由です。
今回の審査には、2時間くらいかかりました。そのうちの1時間が日本映画についての議論でした。作り方、テーマの捉え方が、いい悪いは別としてとてもドメスティックだということです。個人的なテーマや繊細すぎる描き方は海外では通用しません。機材が安価になって、映画が作りやすくなっているため、プライベートな映画を撮りやすくなっているのだと思います。観客を説得できる、そういう作品を目指し、さらによい日本映画が本映画祭にエントリーされることを期待しています」と語り、未来への希望と提言を持って授賞式は終了した。