ニュース
【デイリーニュース】 vol.07 『短編 ③』 Q&A 『追憶ダンス』『The Light Dances』『サイレン』『エクラド』
映画は作るのも、上映するのも大変。だから皆さんに見てもらいたい
左から『追憶ダンス』土屋哲彦監督、黒岩司(出演)、『The Light Dances』伊月肇監督、『サイレン』三宅伸行監督、伊東達夫(プロデューサー)、『エクラド』加藤大志監督、篠﨑功希(プロデューサー)
短編コンペティション部門の第3グループ『短編③』は、コンビニの店員と強盗という立場で再会した元同級生の記憶をめぐる攻防を描く『追憶ダンス』、東京の街灯りに浮かび上がる孤独な少女と少年の逃避行を描いた『The Light Dances』、日本人の老人の偏見とアラブ系男性の勘違いから起きたある事件を描く『サイレン』、親の都合で桐生の小学校に転校した少年がやっとできた友だちと父から聞いた龍を探しに出かける『エクラド』の4作品を上映。
上映後のQ&Aには、『追憶ダンス』から土屋哲彦監督と黒岩司さん(出演)、『The Light Dances』から伊月肇監督、『サイレン』から三宅伸行監督と伊東達夫プロデューサー、『エクラド』からは加藤大志監督と篠﨑功希プロデューサーと、7人が登壇した。
映画の制作にあたり、『追憶ダンス』と『サイレン』が足利市、『エクラド』が桐生市・みどり市、そして『The Light Dances』が東京を描くことで、ロケーション撮影での便宜や製作支援金を得るプロジェクトに参加。そのためもあってか、地域性の強い4作品となった。
事実を乗り越え(?)友情を育むダメ男たちの青春ドラマ『追憶ダンス』は、ほぼ足利市の山奥のコンビニで撮影された。土屋監督は、「同窓会で話題になった、皆で野球の試合を見に行ったという記憶が自分にはなかった。僕の行動も詳細に語られていたけど絶対に行ってない(笑)。その時、人の記憶の曖昧さに興味を持ったんです」と、この映画を作ることになった発端を語った。登壇した黒岩司は、警官が無線で話す相手として声の出演。どうしても参加したかったので、助監督も務めたという。
孤独な少女と、彼女に罪の意識を持つ少年の、多摩地区から都心までの逃避行を描く『The Light Dances』。伊月監督は、「東京をテーマに6本の短編を撮る企画に選ばれ、子どもの視点から描いてみようと思いました。撮影は、役者二人(蒔田彩珠、渡邉奏人)が本当にその感情に至るのを待って行ったため、事前のリハーサルは大変でしたが」と語る。ほぼセピアで描かれる映画が、色を取り戻した後の移動撮影が美しい。撮影は「山田孝之の東京都北区赤羽」の四宮秀俊。
昔、人気だった団地が今は老人と外国人ばかりで閑散としていると新聞で読み、映画化を思いついたという『サイレン』の三宅監督。撮影は、上から見ると星形で、スターハウスと呼ばれた足利の団地で行われた。老人役は津川雅彦、アラブ系男性役はハミッド・メッハリ・シーラマード。監督が「いかつく見えて実は優しいハミッドさんを見つけるまでが一苦労」と言えば、「ひとつも台詞がない役で、俺じゃなくてもいいんじゃないの? と渋る津川さんに、どんなに出ていただきたいか説明することのほうが大変だった」と伊東プロデューサー。三宅監督の『もはや ないもの』は2013年の本映画祭で奨励賞を受賞している。
『エクラド』は、父親役も演じる篠﨑プロデューサーが、何度も挫折しそうになりながら約一年かけて製作した作品。「きりゅうシネマ」の製作支援を受け、300万円くらいかかるだろう撮影を半額で成立させた。「皆さんのおかげでプライスレスな経験をさせていただいた(笑)」と篠﨑プロデューサー。主演の中田昊成君は、東京からの転校生然としたシティボーイ感で選ばれ、演技は初めて。「子役の演出は大変でしたが、撮影時間も限られていたので、大人は労働基準法で子どもが働けない時間も休まず撮影していました(笑)」と加藤監督。監督の『きらわないでよ』は2015年の本映画祭短編部門にノミネートされている。
Q&Aでは『サイレン』に出演した少年が、客席から「映画作るの好きですか?」と根本的な問いかけをし、全員が真摯に答える姿も見られた。映画祭ならではの一幕。
「映画は作ることも大変だけど、上映するのも大変。皆さんに見ていただけてうれしい」というのはほぼ全員の意見。『短編③』は次回、7月20日(木)14時より映像ホールにて上映が行われ、ゲストによるQ&Aも予定されている。