SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2017

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【デイリーニュース】 vol.27 特集〈飛翔する監督たち〉『ロストパラダイス・イン・トーキョー』 白石和彌監督、中野量太監督、坂下雄一郎監督 トークイベント

若手監督育成の取り組みを厚くすることはすなわち映画祭自体の強化でもある

白石和彌監督、中野量太監督、坂下雄一郎監督

特集「飛翔する監督たち」のトークショーに登壇した白石和彌監督(『ロストパラダイス・イン・トーキョー』)、中野量太監督(『チチを撮りに』)、坂下雄一郎監督(『神奈川芸術大学映像学科研究室』)

 

映画祭通常上映の最終日の22日(土)、多目的ホールでは、特集「飛翔する監督たち」の最後を飾る作品として『ロストパラダイス・イン・トーキョー』の上映が行われ、監督の白石和彌さん、中野量太監督(『チチを撮りに』)、坂下雄一郎監督(『神奈川芸術大学映像学科研究室』)と、3人の本映画祭受賞監督によるトークショーが行われた。

 

自分の島(アイランド)を買うことを夢見る自称アイドルのデリヘル嬢マリン、知的障害を持つ兄・実生と、その兄との生活に悩む弟・幹生。ギリギリのところで生きる3人は、出会い、相手の人生に関わることで、見えずにいたものを可視化させていく。『ロストパラダイス・イン・トーキョー(=ロスパラ)』はそんな作品だ。

 

登壇してすぐに司会者から映画の感想を問われ、鑑賞2回目の坂下監督は戸惑いながらも、「最初、社会派の映画かと思って見ていたら、アイランドとかが出てくるあたりで寓話になって、さらに人間ドラマになる。それで終わるのかなと思ったらまたファンタジーになって……。見ているうちにどんどん変化する不思議な印象の映画でした」と。初見の中野監督は、「3人の関係性がとても丁寧に描かれていて、3人とも愛おしかったです。同じ時に応募しなくて本当によかったと思いました(笑)」と述べ、客席を沸かせた。

 

ここからは司会者主導でのクロストーク。まず受賞後、商業デビュー作までの道のりについて。

 

まず白石監督が、「『ロスパラ』をポレポレ東中野で3週間レイトショー上映した時に、あるプロデューサーが見に来てくれて……。その出会いが『凶悪』になり、『日本で一番悪い奴ら』につながった。映画監督になるには、まずプロデューサーに“こいつは商業映画でやっていける”と思わせることだけど、もうひとつ重要なのは“こいつは俺と組んだほうがいいもの作れるんじゃないか?”と思わせること(笑)。そのためにところどころ実験的なことを取り入れるようにしている」と奥義を披露してくれた。

 

次に受賞と同時に、劇場公開を支援する「SKIPシティDシネマプロジェクト(現在は休止)」にも選ばれた中野監督は、「映画祭受賞前はどこの配給会社にも相手にしてもらえなかったので、上映支援は本当にありがたい。新宿武蔵野館で2週間レイトショーをするということで、業務試写を行った。その時、のちに『湯を沸かすほどの熱い愛』を企画・配給してもらうクロックワークスのプロデューサーが2回、最終試写には社長まで見に来て、オリジナルでやろうと言ってくれた。その時点では、ありがたいことに他からもお声がけいただいたが、脚本に時間がかかり、気づいたら待っていてくれたのは、クロックワークスさんともう一社だけに(笑)。でも当初、僕の書いた脚本しかなかった『湯を沸かす~』は、キャスティングしかり、びっくりするほどの結果をもたらしてくれた。『チチを撮りに』もそうだけど、キーとなったのは、まだ何者でもない僕を買ってくれたプロデューサーとの出会いでした」とプロデューサーとの出会いの大切さを語った。

 

坂下監督は、「『神奈川芸術大学~』に出演した俳優のマネージャーさんの推薦で、監督を探していた松竹ブロードキャスティング(SBC)のプロデューサーに会い、『東京ウィンドオーケストラ』で商業デビューしました。本当に運としか言いようがありません」。

 

約30分のトークはあっという間。締めくくりの質問は、「若手作家の育成」を掲げる本映画祭に望むこと。

 

坂下監督は、「こういう映画祭があるだけでありがたい」と前置きし、「この映画祭は、よく自主映画に求められるとがった感じではなく、丁寧に作ったウェルメイドな映画が受賞する傾向にあるような気がします。(プロを目指す作家の育成が前提)だから僕も応募したわけですが、この方針で続けていただければと思います」。

 

中野監督は、「ここで賞をいただき、多くのプロデューサーと会う機会ができたことで現在の僕があります。そういう機会をもっと作っていただけると嬉しいし、今はなくなってしまったそうですが、劇場公開支援のプロジェクトはぜひ復活してもらえると嬉しいです。そうすれば髙い志を持った作家がもっともっと応募してくると思います」と上映支援の重要性を再度訴えた。

 

白石監督は、「僕の時の審査員には、山本又一朗さんと春名慶さんという日本のトッププロデューサーがいました。作家性もあるけれど、とにかくデビューさせたい。そのためのステップにしてくれという熱い思いを語ってくれた。その言葉にずっと背中を押されているような気がします。でもデビューすることはできても、次を撮るのは難しい。今日のトークの質問にもあったけれど、受賞した次をどうしたらいいのかという仕組み作りを考え、応援してほしい。これは若手監督の育成ではあるけれど、映画祭自体も発展させると思う」と結んだ。

 

トークショーでは触れなかった3監督による多様な話は、会場で販売している公式カタログに掲載している。

 

明日23日(日)は、11時から映像ホールでクロージングセレモニーが行われる。表彰式に続いて、アニメ―ション、短編、長編部門のグランプリ作品の上映される。

 


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