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【デイリーニュース】 vol.28 クロージング・セレモニー(表彰式)開催!
すべての映画に感謝を捧げ、9日間にわたる映画祭閉幕
クロージング・セレモニーに登壇した長編、短編、アニメーションの各コンペ部門の受賞者と審査員
7月15日(土)から9日間にわたって開催されたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2017。14回目の今年のコンペティション部門には85の国と地域から810作品の応募があり、その中から選び抜かれた長編12作品、短編12作品、アニメーション10作品が上映された。最終日の23日(日)には、クロージング・セレモニーと表彰式が行われ、SKIPシティ国際映画祭実行委員会会長の上田清司埼玉県知事、八木信忠総合プロデューサー、土川勉映画祭ディレクター、SKIPシティ国際映画祭実行委員会副会長の奥ノ木信夫川口市長らのあいさつに続き、各賞の受賞作・受賞者が発表された。受賞者のコメント、および審査委員長の総評は以下の通り(*受賞一覧はこちら)。
■長編コンペティション部門
最優秀作品賞
『愛せない息子』 アーリル・アンドレーセン監督
今回来日できなかった監督に代わり、登壇したのは脚本家のヒルデ・スサン・ヤークトネスさん。「動物の赤ちゃんには、生まれてすぐ走り出さなければならない種もあります。カナダのカリブーは、生まれたその日に35万頭の群れとともに移動をはじめます。でも人間の子どもは、生まれてから何年も親や世話をしてくれる人に頼らなければなりません。その時期にさまざまなことが起きますし、一生の傷を負うこともある。親になるということは、人生でも最も重要で難しいことだと思います。脚本はアンドレーセン監督とホルヘ・カマチョ、そして私で書きましたが、最初のアイデアは『もし親が子どもを愛せなかったらどうする?』というタブーを描くことでした。親として失格だと思っている人がいたら、この映画を見て、自分のなかにとどめず、人と話し合うことが大切だということに気づいていただければと思います」と語った。
登壇した本作脚本家のひとり、ヒルデ・スサン・ヤークトネスさん
監督賞
『中国のゴッホ』 ハイボー・ユウ監督、キキ・ティエンチー・ユウ監督
「初めて来た日本の映画祭で賞をいただいて嬉しく思います。このドキュメンタリーの撮影期間は6年間で、その前の写真撮影やリサーチ期間も含めると制作に12年かかっています。最初は写真家としてこの村に行き、撮った写真はオランダなど世界各地で展示しました。2011年に娘とともにドキュメンタリーを撮ることを決めました。今日はここに来られなかった娘も監督に含まれています。この油絵の村に行ったのは、ゴッホももちろんですが、ここで働く職人たちがどのように貢献しているのか、ここからどのような新しい考えが生まれてくるのかに興味があったからです。私は56歳ですが、これからももっと素晴らしい作品を作り、またこの映画祭に参加してみなさんにお目にかかれるのを楽しみにしています」
登壇したハイボー・ユウ監督
審査員特別賞
『市民』 ローランド・ヴラニク監督
「観客のみなさんは、とてもセンシティブで知識もあり、上映後のQ&Aで話すのは楽しかったです。この映画には重要なメッセージが含まれていて、世界がいま直面している難民の問題には悲劇的な側面がたくさんあります。そこにスポットをあてた作品が映画祭で上映され、そして賞をいただけたことをとても嬉しく思います」
ローランド・ヴラニク監督
SKIPシティアワード
『三尺魂』 加藤悦生監督
「3年前に長編部門でノミネートしていただいて、その時は何も取れなかったので嬉しいです。この映画祭は若手の登竜門ということですが、僕は今年46歳なので大丈夫なのかなと思いながら、いただけるものはありがたくいただきます(笑)。映画は、監督の思いもありますが、それを具現化するのは役者さんです。僕は何もしていないんじゃないかというくらい、4人の役者さんは本当に素晴らしかったです。村上穂乃佳さん、木ノ本嶺浩さん、辻しのぶさん、そして津田寛治さん。4人の役者さんのおかげでこの賞をいただけたと思っています。ありがとうございました」
加藤悦生監督
【長編部門総評】
長編コンペティション部門の黒沢清国際審査委員長は、「父と息子の関係を描く作品はたくさんありますが、『愛せない息子』がユニークなのは、ノルウェー人の父親がコロンビア人の養子との関係を解消しようとすることです。エンディングもセンチメンタリズムに陥らず的確に描けていたと思います。映画祭には、普段見る機会のないさまざまな国の作品が集められていて、どれもレベルが高く、そのぶん審査は揉めるのではないかと思いました。全作品見終わったあとに私の中には『これが一番好きだ』というものがはっきりありましたが、審査員4人の感想もほぼ同じでほっとしました。ですから審査はあっという間に終わったのです。候補作の中にはすでに他の映画祭で評価された作品もありましたが、自然とそういう作品は選ばれず、受賞作は今回新しく紹介された作品ばかりだったことは素直な喜びです。今後さらに評価を高めていく作家たちだと思いますが、彼らを発見したのは川口だ、ということは誇っていいと思います。受賞しなかった作品も個性的なものばかりで、充実した時間を過ごせました。すべての映画に感謝を捧げたいと思います」と言葉を締めくくった。
■短編コンペティション部門
最優秀作品賞
『冬が燃えたら』 浅沼直也監督
「この作品は、キャスト2人とスタッフ3人という本当に手作りの映画です。主演の男の子(澤田和宏さん)は10年来の友だちで、苦労を共にした仲間なので、ありがとうと伝えたいです。助監督の伊藤君にも感謝します。グランプリをいただいたことを励みにして、これからも映画制作を頑張っていきたいと思います」
浅沼直也監督
奨励賞
『サイレン』 三宅伸行監督
「この映画祭で賞をもらえたことを嬉しく思います。一度奨励賞をいただいたことがあるので、正直、少し悔しい気持ちもありますが(笑)。この映画祭は観客もスタッフの方々も素晴らしくて、本当に映画が好きな人たちが集まってできた映画祭なんだと思います。上映後にいろいろな人と話したり、同じくノミネートされた監督の人たちと知り合ったり、本当に充実した時間を過ごさせていただきました。一番感謝したいのはこの映画を一緒に作ったスタッフとキャストの方々で、受賞を一緒に喜びたいです。次は長編映画で戻ってきたいと思います」
三宅伸行監督
奨励賞
『追憶ダンス』 土屋哲彦監督
「短編部門はすべて見ましたが、本当に素晴らしい作品ばかりで、自分の映画への向き合い方を考えさせられるようなすごい作品もたくさんありました。その中で選んでいただいて感激しています。映画は一人で作れないものなので、プロデューサー、俳優とスタッフのみなさんに感謝します。自分は常にお客さんが楽しめるものを作りたいという気持ちで作っているんですが、映画にはメッセージが必要だし、そこが映画の素敵なところだと思っているので、この作品の社会的なメッセージをくみ取った上でこの賞をいただけたことが嬉しいです。今後はより多くの人に見ていただけるように、海外の映画祭にも出していけたらと思いますので、つてのある方はよろしく願いします(笑)」
土屋哲彦監督
【短編部門総評】
短編部門の桝井省志審査委員長は、「『冬が燃えたら』は母と彼女を介護する息子の話で、介護という社会的な題材に勇気をもって臨んだ若い監督に拍手を贈りたいと思います。短編ノミネート作品の12本はいずれもクオリティが高く、受賞作は3本ですが、それ以外の作品を評価していないということではありません。これまでは監督の登竜門的な部門でしたが、今年はほぼプロフェッショナルな方々のコンペティションといってもいいと思います。さまざまな商業的な支えがある中で、自分の表現したいものにチャレンジしている姿に感動を覚えました。同じプロフェッショナルとして、みなさんと一緒に作品を作るチャンスを私も狙いたいと思います」と総評した。
■アニメーションコンペティション部門
最優秀作品賞
『I think you’re a little confused』 小川育監督
「この作品は大学院の終了制作として作ったものです。学生として最後の作品だったので、このような賞をいただいてとても嬉しく思います。いまは仕事をしているので、なかなか自分の制作のための時間を作るのが難しいんですが、この受賞で、自分の作品をもっと作りたいという思いが強まりました」
小川育監督
奨励賞
『The Interpreter』 尾角典子監督
海外在住の尾角監督は残念ながら表彰式は欠席。受賞のコメントが読み上げられた。
「この作品は、日本のフェスティバルでは初めての上映になります。この映画祭で上映できただけでもニュースだったのですが、賞までいただいてとても嬉しく思っています。海外でも活動することが多い私にとっては、日本で賞をいただくということはとても意義深いものです。今後もこの経験を糧に制作活動を頑張ってきたいと思います」
奨励賞
『竹田駅メモリーズ』 浜村満果監督
「とても嬉しいです。竹田駅のよさが伝わるといいなと思って作りました。こういう賞にノミネートされたことも、ちゃんとした自分のアニメーションを作ったのも初めてだったのに、こんなふうに賞をいただいて本当に嬉しいです。ご覧いただいてありがとうございました」
浜村満果監督
【アニメーション部門総評】
小出正志審査委員長は、「本映画祭のアニメーション部門は設置されて数年の若い部門ですが、応募作にはいずれ劣らぬ優秀な作品が集まり、着実な認知が進んでいると思います。新人登竜門的な主旨の映画祭であることを鑑みて、将来の活躍や発展が期待できる新進気鋭の作家に重点を置いた選考になりました。我が国のアニメーションは2D全盛で、そのほかの技法を使った作品は少数です。受賞した『I think you’re a little confused』はストップモーション・アニメーション、『The Interpreter』はコラージュ。立体でも平面でもアニメーションには多様な技法や表現があります。映画祭には、そういった普段見られない作品を見てもらうという役割もあると思います。これらの作品がアニメーション界に大きな刺激を与えてくれることを期待しています」と総評した。