7月17日(火)
『短編(4)』 Q&A
『わらわれもしない』 『豪速球』 『日なたの家族』
左から『わらわれもしない』佐藤福太郎監督、渋谷樹生くん、美元さん、『豪速球』土屋哲彦監督、『日なたの家族』山本曉監督、佐藤貢三さん
4日目を迎えた映画祭の朝一番の上映は、短編コンペティション部門『短編(4)』の、『わらわれもしない』、『豪速球』、『日なたの家族』の3作品。舞台挨拶は、ほとんどのゲストが発した「猛暑の平日、朝早い時間の上映にお越しいただき、ありがとうございます」という観客への感謝の言葉で始まった。
大会直前の高校球児と、野球部OBの孤独な大学生、そして伝説のピッチャー嶋田そっくりな浮浪者が織りなす、奇天烈な関係をファンタスティックに描いたコメディ『豪速球』。まず、「野球をモチーフに選んだのは、僕自身が高校時代野球部だったので。外国ではあまり一般的ではない先輩と後輩という、冷静に考えると可笑しい関係性の先に、本当の友情もあるのではないかと考え、描きました」と土屋哲彦監督が挨拶。
一見幸せに見える家庭で育つ主人公と、彼が慕う荒れた家庭に生まれた少年てっちゃん。『わらわれもしない』は、そんな二人の少年の目から欺瞞に満ちた社会を捉えた作品だ。てっちゃん役の渋谷樹生くん、主人公の母を演じた美元さん、そして佐藤福太郎監督が登壇。まず「泣いてるように笑うてっちゃんを演じるのはとても難しかった」と樹生くん。そしてタイトルに込めた思いを「(カメラが主人公目線なため)ほとんど登場しない少年を取り巻く関係性が、本当に“笑われもしない”おざなりなものなのかを問う意味で」と佐藤監督が語れば、美元さんがそんな監督の意気込みの一端を「一人に3時間近くかける驚きのオーディションだった」と明かした。
骨肉の争いを得意なモチーフとしてきたミステリー作家が没し、小説同様な事件へと発展しそうな空気を醸し始めた家族の葬儀後の一日を描いた『日なたの家族』。
「家族の関係性と空気感をスクリーンを通じて感じ取っていただくために、撮影は2日間でしたが、稽古を6日間行いました」と制作について山本曉監督。「当初、カットを割らないで撮影すると監督から言われ、これはやばいとリハーサルさせて(笑)とお願いしました。俳優は皆、初対面でしたが、徐々にふだん疎遠な兄弟みたいな感じになってきて(笑)」と主演の佐藤貢三さんが笑わせた。
偶然だが、『豪速球』『日なたの家族』には同じ俳優が起用されている。両監督ともここで見て驚いたそう。同じ俳優をどうさい配するか。監督の演出術を楽しむのも映画祭の楽しみ方かもしれない。
『短編(4)』は、21日(土)17:30より多目的ホールでも上映する。