【デイリーニュース】 7月14日(日)
vol.11 『チャイカ』ミゲル・アンヘル・ヒメネス監督Q&A
「荒野にロケットが落ちている美しい写真にインスパイアされました」
ミゲル・アンヘル・ヒメネス監督
長編コンペティション部門出品作『チャイカ』は、ロシアとカザフスタンを舞台に、居場所を求めて彷徨う男女の過酷な運命を描いたドラマ。
巨大貨物船で船員相手の娼婦をしていたアイシャは、乗船中に妊娠が発覚、男の子を出産して船を降りた。同じ船の船員だったアジルベックは、行くあてのないアイシャを連れて故郷に向かう。そこは一軒の貧しい家以外に何もない、凍てつくシベリアの荒野だった。アイシャと赤ん坊は、粗野なアジルベックの家族と共にここで暮らすことになるのだが……。
脚本も執筆したミゲル・アンヘル・ヒメネス監督はスペイン人。なぜ遠く文化も全く違うロシアとカザフスタンを物語の舞台にしたのだろう。
「2008年に長編デビュー作“Ori”をロシアとグルジアで撮影し、内戦などがあって大変な時期だったのにも関わらず非常に良い経験をしたから、というのが理由のひとつです。また、マグナムフォトの写真家、ジョナス・ベンディクセンの『サテライト』という写真集の中の、荒野にロケットの残骸が落ちている美しい写真にインスパイアされたということもあります」。
映画学校では撮影を学んだというヒメネス監督の映像へのこだわりは並大抵のものではない。「映像は演出の一部であり、映画の最も大切な部分です。今回は予算が限られているにもかかわらず、撮影監督が豊富なアイデアを出してくれ、天候にも恵まれて幸運でした」。
過酷な状況を必死に生きる、どこかミステリアスなアイシャを演じたのは、サロム・デムリアというグルジアの女優。
「最初は本物の娼婦をキャスティングしようとしたんです。でも演技が全く駄目で(笑)、女優を起用することにしました。オーディションにはおそらくグルジア中の女優志望者が集まりましたが、脚本を読んで断ってきた人も多かった。保守的なグルジアでは、ヌードやセックスシーンに抵抗があるのです。そんな中で、シーンの必要性を理解し、家族を説得してまで出演してくれたサロムの勇気を誇りに思います」。
『チャイカ』の次回上映は、19日(金)17:00から映像ホールで行われる。