【デイリーニュース】 7月15日(月・祝)
vol.19 『ロシアンディスコ』オリヴァー・ツィーゲンバルグ監督Q&A
「“ドイツ映画的”でない、インターナショナルな映画を目指しました」
オリヴァー・ツィーゲンバルグ監督
長編コンペティション出品作『ロシアンディスコ』は、新たな生活を求めてモスクワから東ベルリンに移り住んだ若者3人組の、慣れない土地での奮闘、友情、そして恋を描くポップな青春グラフィティ。
1989年、ウラジーミル、アンドレイ、ミーシャの仲良し3人組は、社会主義が衰退するモスクワからベルリンの壁崩壊後の混沌としたパワーに溢れる東ベルリンにやってきた。3人がまず始めたのは駅の構内でのビール販売。商売はそこそこ成功、ノーテンキな3人は、他の移民と衝突したり、移民局に追いかけられたりしながらも、たくましく地域に根をおろしていく。やがてウラジーミルは、同じくロシア移民のダンサーに恋をする……。
原作は、実際にロシアからドイツへの移民であるウラジーミル・カミーナーのベストセラー小説。脚本も手がけているオリヴァー・ツィーゲンバルグ監督は、原作を活かした映画作りを心がけたと話す。
「30本の短篇から成る原作は、ロシア人にまつわるウソか本当かわからない小ネタに溢れた、楽しく詩的な物語です。話の信憑性はあまり気にせず、そのキラキラしたエッセンスを凝縮させました。ステレオタイプではない、フレッシュなロシア人の若者たちのキャラクターは、原作に負うところが大きいんです」。
移民をテーマにしたドイツ映画というと何だか重苦しい作品をイメージしがちだが、『ロシアンディスコ』はアニメーションやノリのいい音楽をふんだんに使った軽妙なタッチ。
「映画のルックスがあまり“ドイツ映画的”にならないように、音楽やコミカルなシーンの少ない厳しい雰囲気にならないようにと早い段階から決めていました。フランス在住の日本人カメラマン、永田鉄男さん(『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』)を撮影監督に起用したのも、インターナショナルな映画にしたかったからです。音楽も映画のリズムを作る重要な要素で、音の流れていないシーンは全体で2、3分しかありません」。
ちなみにディスコの客が合唱するロシアの歌謡曲( 英語版の“Those Were the Days”が世界中で大ヒット、日本でも『悲しき天使』のタイトルで知られる)は、「冷戦時代のソ連で唯一成功した輸出品」と言われているとか。また、映画を見た後しばらく頭から離れない“Super Good”は、ソ連崩壊後のロシアにおける最大のヒット曲だという。音楽だけでも楽しめる作品だ。
『ロシアンディスコ』は次回、20日(土)17:00から映像ホールで上映される。