SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2017

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ディレクター:土川勉

昨年の本映画祭で長編部門監督賞を受賞した『タンナ』は、本映画祭では初のノミネートとなったバヌアツ共和国(オーストラリアとの合作)製作の作品でした。同作は、先日行われた第89回米国アカデミー賞の外国語映画賞にもノミネートされ高い注目を集めましたが、残念ながら日本での劇場公開は決まっていません。昨年の本映画祭での上映が、同作が日本で上映される数少ない機会となったことは、国際映画祭を開催する我々にとって大変光栄なことであり、またそのような作品を積極的に紹介していくことが、映画祭の持つ使命のひとつであると感じています。

さて、14回目を迎える今年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭にも、日本ではあまり観る事の出来ない国からの映画が多数ノミネートしています。今年の長編部門(国際コンペティション)には85の国と地域から617本、国内の短編部門(国内コンペティション)・アニメーション部門(国内コンペティション)に193本の応募がありました。今年はアルメニア共和国、スロヴァキア共和国、ネパール連邦民主共和国の作品が本映画祭では初のノミネートとなっています。

南コーカサスのアルメニア共和国(フランス、ベルギーとの合作)から、クラリネット奏者が偶然携帯を拾ったことから殺し屋と間違われ、高額の報酬の依頼を受けるクライム・コメディ『殺し屋狂騒曲』や、アジアのネパール連邦民主共和国からはネパールの内戦を戦ってきた男が、父の死をきっかけに故郷の村に戻るのだが、そこで起きる兄弟や村人たちとの確執に苦悩するさまを描く『ホワイト・サン』、また土産品のゴッホの複製画を描くことに人生を捧げる中国人を追った、本映画祭では久しぶりの海外ドキュメンタリー『中国のゴッホ』など今年も多種多様な映画がご覧いただけます。ご期待ください。

また今年の長編部門の審査委員長は『岸辺の旅』や『ダゲレオタイプの女』などの監督で、今最も世界から注目されている日本の映画人である黒沢清氏にお願いしました。国際的にも評価されている同氏を中心に、今年も激論極まる審査が行われることと、今から期待を膨らませています。

本映画祭は、次世代を担う新たな才能の発掘と、Dシネマのより一層の発展及び映像産業の発展に寄与することを目指して開催されています。特に若手映像クリエイターの発掘・支援という面では、国内作品を対象に、受賞者のその後の映画制作をサポートする「SKIPシティアワード」の表彰や、受賞作の劇場公開を手掛けてきた「SKIPシティDシネマプロジェクト」など、これまでさまざまな形で支援を行ってきました。そして今、嬉しいことにその若き監督たちが徐々にではありますが、日本映画界の中で存在感を示し始めてきました。もちろんそれは彼らの努力と才能あってのことではありますが、本映画祭が、彼らの活躍に少しでも助力することができていたなら、何よりも喜ばしいことだと思っています。

2009年に『ロストパラダイス・イン・トーキョー』が長編部門にノミネートし、第一回のSKIPシティアワードを受賞した白石和彌監督は、2013年公開の『凶悪』で第37回日本アカデミー賞優秀監督賞、新藤兼人賞2013金賞ほかを受賞し、その後も『日本で一番悪い奴ら』や今秋に公開を控える『彼女がその名を知らない鳥たち』など次々と話題作を手掛けています。また2012年の長編部門にノミネートした『チチを撮りに』で、日本人初の監督賞とSKIPシティアワードを同時受賞した中野量太監督は、昨年公開の『湯を沸かすほどの熱い愛』で第40回日本アカデミー賞優秀監督賞、新藤兼人賞2016金賞、報知映画賞新人賞ほか多数の映画賞を受賞しました。  本年は、このように本映画祭を通して巣立って行き、現在活躍している監督たちの、本映画祭での上映作品を「飛翔する監督たち」と題して特集します。今後日本映画界を牽引して行くであろう彼らの才能の原点を、ぜひご覧いただきたいと思います。

最後になりましたが、数多い応募作品を選考して頂いた一次審査員の皆様や本映画祭に関わる全てのスタッフ、関係者の皆様にこの場をお借りして感謝の意を表したいと思います。

 


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