ニュース

【デイリーニュース】vol.04 関連企画「埼玉関連映画上映」『おくれ咲き』島春迦監督Q&A

地域のみなさんと交流しながら発掘していきたい

おくれ咲き』のQ&Aに登壇した島春迦監督

 

埼玉を舞台にした作品を応援する関連企画「埼玉関連映画上映」が14日(日)、JR川口駅直結キュポ・ラ7階のメディアセブンで行われ、寄居町を舞台とした島春迦監督の『おくれ咲き』が上映された。川口市を舞台とした『キューポラのある街』はもちろん、今年ヒットを記録した『翔んで埼玉』など、埼玉県を舞台とした映画は数多い。本映画祭はこれまでも”埼玉映画”の作品製作などを推し進めていたが、今年は”埼玉映画”を上映といった面でも後押しする。

 

埼北の盆地で職業紹介所を営む康男のもとには日々”ワケあり”な人々が訪れる。そんな困り者を相手に悪戦苦闘しながらも、周囲の人情に支えられて康男は過ごしていた。しかしある日、これまでに就業経験のない専業主婦の具美がやってきて……。寄居町を中心とした風光明媚な景色はもちろん、土地の文化や、そこで暮らす飾らない市井の人々を丁寧に描写。それらを背景に描かれる職業紹介所を訪れる依頼人と康男が織りなす悲喜交交な人間模様が胸を打つ。

 

上映後のQ&Aには島監督が登壇。埼玉関連映画上映ということもあり、まずはロケ地に関する質問が飛び出した。本作は満開の桜並木で幕を開けるほか、美しい自然を映した印象的なシーンが多く登場する。

 

「冒頭の桜並木は寄居町にある三ケ山緑地公園にある県環境整備センターが植樹した桜で、まだ植えて10年くらいの若い並木です。紫の花のシーンも印象的だったと思いますが、これも寄居町の男衾(おぶすま)というところで撮影しました。私が寄居町に拠点をおいている理由のひとつでもあるんですが、寄居町にはとにかく自然がいっぱい残っていて、里山に囲まれていて、きれいなところがまだたくさんあるんです」。

 

本作で主役の康男を演じているのは、落語家の林家たい平さん。また、具美役には熊谷真実さんがキャスティングされている。客席からは構想段階で二人を想定されていたのかという質問が寄せられた。

 

「真実さんは前作『花の兄』に出ていただいていたので、もう一度お願いしますと声をかけました。職業紹介所の所長である康男役は構想段階で決めようと思っていました。イメージとして人情家でヤキモチ焼きというキャラを追求していったら、秩父出身のたい平さんが思い浮かびました。たまたま真実さんとお酒の場で『たい平さんは忙しいから無理だよね』という話をしていたら、真実さんから友だちだから声かけてみるよって。そうしたら真実さん、どうやらたい平さんに『私の恋人役らしい』という伝え方をしたらしいんですね(笑)。すると、たい平さんが『恋愛ものに出たことないし、恥ずかしいけど、真実ちゃんが教えてくれるんだったら出ようかな』と答えてくださったのがきっかけでした」

 

おくれ咲き』には、開花の盛りが過ぎても、その人次第でまだまだ花は咲かせられるという意味が込められているという。島監督は質疑応答のなかで、映画を通じて訴えたかったことにも答えてくれた。

 

「以前、ホームページに高齢化社会と書いたら、すでに高齢社会ですよという指摘を受けました。そういった段階となった高齢社会のなかで、年齢を問わずに働きたい人は働いて、お金が必要な人も糧を得るということ。日本でも今は変わりつつあると思いますが、まだまだ面接とかに行くと60歳を過ぎているからということで門前払いになったりという現実もあります。そういうのをちょっと見直して柔軟に元気な人は働けるような、そういう社会になればいいなという願いと、大人になっても恋に破れたり、パートナーシップから降りた人がもう1回出会ってまた結ばれるようなことがあってもいいかなと」

 

映画の地産地消を掲げる島監督。今後の取り組みにも興味が湧いてくる。

 

「寄居に限らず、埼玉には私たちが知らない良いところもがまだいっぱいあると思うので、地域のみなさんと交流しながら発掘していきたいです。とはいえ、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭で取り上げていただくようにするためには、映画の内容も良くしていかなければいけない。そのほうが、地元、スタッフ、キャストみんなが底上げされて楽しくなると思う。良い映画を作れば周りもほっとかなくなりますよね。どうなるかわかりませんが、たい平さんが面白かったので、もう1本くらいお願いしてみようかなと思って、構想し始めています。また高齢社会にスポットを当てた作品になると思います」

 

会場には女優の泉水美和子さん、カオルさんら本作の出演者が多く駆けつけていたこともあり、質問が途切れることのない活気に満ちた時間となった。

 

埼玉関連映画上映」では、角川裕明監督の『とってもゴースト』の無料上映も予定。7月15日(月・祝)15:30よりメディアセブンにて行われる。上映前には角川監督、出演者による舞台挨拶も予定されているので、ぜひ”埼玉映画”を応援しに訪れてほしい。整理券の配布方法はこちら