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【デイリーニュース】vol.20 関連企画「メイド・インSKIPシティ」舞台挨拶『避雷針』『コバトンTHEムービー「うせもの」』

SKIPシティ発のご当地映画と最先端技術の映画

(上段左から)「コバトンTHEムービー『うせもの』」福山功起監督、佐々木綾香、前田拓海、五島百花、(下段左から)『避雷針』中村貴一朗監督、関口アナン、吹越ともみ

 

映画祭6日目。「メイド・インSKIPシティ」の2作品が上映された。

メイド・インSKIPシティ」は、SKIPシティを拠点とするクリエイターによる、埼玉の魅力を映像で発信する「コバトンTHEムービー」と、川口を舞台にしたラブストーリーの、短編2本で構成された関連企画。今年は「コバトンTHEムービー『うせもの』」と、2D作品版とドーム作品版(180度魚眼レンズで撮影され、半球体状のドームスクリーンに上映される)で撮影された『避雷針』の2本立てだ。

 

今年の「コバトンTHEムービー『うせもの』」は!?

(左から)「コバトンTHEムービー『うせもの』」日高市の谷ケ崎照雄市長、福山功起監督、佐々木綾香、前田拓海、五島百花

 

コバトンTHEムービー『うせもの』」は福山功起監督の作品。2015年の映画祭オープニング作品『鉄の子』など、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭ではおなじみの監督である。今回は日高市で撮影。「遠足の聖地」と呼ばれる日和田山や巾着田などの名所が登場している。

 

小学校教師の母は遠足の下見に日高山に出かける。不登校になった息子も連れていくが、何となく気まずい。そこに突然声をかけてきたのは母の昔の教え子だった。彼女もまた不登校だった過去を持つ。3人の遠足は、”何かを忘れるための大人の遠足”になっていく。

 

舞台挨拶には、福山功起監督と、母役の佐々木綾香、息子役の前田拓海、母の昔の教え子役の五島百花が登壇。最後に来場した日高市の谷ケ崎照雄市長も飛び入りで登場した。

 

撮影は、ほとんどが日和田山で行われている。

佐々木が、「車で一時間くらいのところにこんな絶景があるんだと感動しているのをばれないようにしながら、演技に集中しようとして、なんか、いっぱいいっぱいでした」

五島は、「私は電車で行ったんですけれど、降りた途端の空気のおいしさにびっくりしました。巾着田にも行きましたが、まだ彼岸花が咲く前だったので、次は彼岸花が咲いているときに訪れたいと思います」

前田は、「山に上るのは大変でしたが、山登りって山頂に立つことだと思っていたけれど、景色がとてもきれいで、山頂だけじゃないんだなと思いました」

しかし、監督は、「日和田山には3~4回登っています。小学生の遠足のメッカだそうなので、ちょっとなめていましたが、ゼイセイハァハァ言っちゃいますね。反省しました(笑)」

谷ケ崎市長は、「日和田山は、標高305mなので、誰でも登れます」とアピールした。

 

映画では、不登校になってひと月の息子を演じた前田は、市長から「実際には学校行っているの?」と聞かれ、「学校好きです」と即答。役作りには自身の経験を活かしたことも明かした。「2年生の時いじめられていたんですが、男の先生が強く怒ってくれたらいじめが止んだんです。その時のことを思い出しながら役作りをしました」。

 

川口が舞台となった映画『避雷針』とは!?

 

(左から)『避雷針』の中村喜一郎監督、関口アナン、吹越ともみ

 

避雷針』の監督は、中村貴一朗。2010年のSKIPシティアワード作品『シーソー SEESAW』(完山京洪監督)では、アシスタント・プロデューサーを務めた。現在は企業の広告映像を監督し、国際的な賞にも輝いている。

 

ユウコから避雷針のないビルを見つけたら結婚してあげると言われたハルが、避雷針のないビルを探しに出かけるという青春ラブストーリー。川口で撮影され、市民おなじみの場所が新しい顔を見せてくれている。

 

舞台挨拶には、中村貴一朗監督と主演のハル役の関口アナンとユウコ役の吹越ともみが登壇した。

 

なぜ避雷針を映画のモチーフにしたのかという問いに対し、中村監督は、「子どものころから避雷針に興味があって、避雷針を見つけるというか、見るのが好きだったんです。お気に入りの避雷針のあるビルなんていうのもあるくらい。実は川口、避雷針を撮るのに適した町なんです。フラットで坂道なくて、ビルが平行に連なっていて空が広くて、避雷針がすくっと空に向かって林立している感じがある。避雷針の種類もいろいろあって、駅前のビルではライオン像に突き刺さっている感じの避雷針を見ることもできます。こんなのなかなかないんですよ」と、興味深い事実を教えてくれた。

 

ハルを演じた関口アナンは、「初めて川口に来ましたが、確かに高いところから見ているとフラットで、空が広いなと感じました。映画では、階段を上るシーンがたくさんあって、それが大変でした。そごう川口店のらせん階段を4階分くらい、何回も何回も上ったので、さすがに筋肉痛になりました。もともと高いところは好きなのですが、SKIPシティの屋上は怖かった」

 

ユウコ役の吹越ともみは、「私も高いところは得意なんですが、高飛び込みの飛び込み台のシーンはさすがに怖くて、震えました。足がすくんでいるの、演技じゃありません(笑)」

 

この作品は、避雷針探しのアドベンチャー映画ではなく、切ないラブストーリー。

吹越は、「これまでで一番“青春したな”という瞬間を思い出してもらえたら嬉しいですね」と語る。

 

関口が演じた2人の恋を、「初めて付き合った人と結婚まで行くのは奇跡で、たいていはうまくいかない。しかも、付き合っているときに仲が良ければ良いほど、後になって、当時のことが効いてくるんですよね」と振り返ると、中村監督は「ツボはそこなんです」と補足する。「付き合っているときはわかっていなかったことが、急に理解できる瞬間ってあるじゃないですか。あの時、彼女は何を言いたかったのか、何を求めていたのか、5年、10年たって突然明らかになる瞬間。今回のテーマはそれです」。ラストのシークエンス、そのツボがやってくるとき、ハルの隣にいるのは……。

 

最後、ドーム映像の撮影の困難さを語ってもらった。

演出的なところでは、「撮影方法からして全く違います。レンズが180度撮影できるレンズ一本しか使えない。通常であれば、俳優に寄ったり引いたり、俳優の視線の先にあるものはこれですよというカットを入れたりと、映像で説明できるわけですが、それができない。つまり、ワンシーンの中で芝居をする。逆に観客は、その世界に包まれるというか、没入感があるはず。ストーリーの中に入ってしまう感覚です」と中村監督。

 

演じる側には、別の困難があったそうで、「立ち位置が繊細なんですよ。ちょっとずれると距離感が狂ってくる。だから同じ物語なのに、まったく別の芝居をする感じでした」と関口。「レンズとの距離感が決まっているので、それをちょっと外れると、顔がぐにゃってなってしまうんです。完成した映画の顔がぐにゃっとなっていないか心配です」

 

上映にはプラネタリウムが必要となるドーム映像版『避雷針』の上映機会は多くない。上映情報を受け取ったら、ぜひ観ておきたい作品だ。

 

なお、『うせもの』と、『避雷針』2D版は、後日「SKIPシティチャンネル」にて配信予定だ。