7月15日(日)
『旅の始まり』の脚本家タイス・ファン・マーレ
「自分の家族を描いたパーソナルな物語が多くの国の人々の共感を得ました」
脚本家のタイス・ファン・マーレ氏
長編コンペティション部門出品作『旅の始まり』は、オランダの作品。今まさにフランスにバカンスに出かけようとしていたファービーク一家に、末期ガンの祖父が余命いくばくもないという知らせが入る。皆が楽しみにしていたバカンスは中止、様々な思いを抱えた家族は、それぞれ自分を見つめ直すことになる。
上映後のQ&Aには、重いテーマをユーモアもたっぷりに描いた脚本のタイス・ファン・マーレ氏が登壇。
「最初は自分の家族のことを描こうとしたんです。実際に祖父母が亡くなった時のことを物語にしたかった。息子が親友とうまくいかなくなる話が出てきますが、あれも私が11歳の時に経験したこと。パーソナルな作品のつもりが、オランダだけでなく多くの国の人々の共感を得ることができました」。
作品の中で特に印象的なのが、祖父と末の孫娘の関係だ。祖父を演じたハンス・クロアゼはオランダのベテラン俳優、“死”の意味を理解しようとする孫娘ヤスマインを演じたスカイラー・エイヘルマンスはそれまで演技経験のなかった7歳の少女。2人の会話は本当に自然に見える。
「スカイラーを見つけられたのは本当にラッキーでした。彼女のセリフは全部脚本に書かれた通りです。彼女はセリフをすぐに理解して記憶し、自分の言葉として話すことができる。コンピュータみたいに(笑)。監督のマルヒン・ロハールとは12年ほど一緒に仕事をしていますが、彼女は小さな子どもたちと仕事をするのが非常にうまく、彼らといい関係を築くことができるということもあります」。
祖父の死を目前にした家族の物語は、原題「ボンボヤージュ」が示すようにとても前向きなメッセージも残してくれる。
「『生と死』はこの作品のテーマのひとつですが、『前進』も重要なテーマです。家族それぞれが今の状態から少しずつ成長していく。友情に悩む息子、初体験の相手を探す娘――ひとつの家族の中で同時に起こる別々の物語をアンサンブルで描いているんです」。
『旅の始まり』は、18日(水)11:00から多目的ホールでも上映される。