7月16日(月)
『死と乙女という名のダンス』アンドレ・ヒューレス監督 Q&A
「ダンスを使って感情のもうひとつの層を描きたかった」
アンドレ・ヒューレス監督
長編コンペティション部門出品作『死と乙女という名のダンス』は、ハンガリーでダンスカンパニーを主宰する弟のもとに、20年前に国を出た兄が突然現れるところから始まる。かつて共にカンパニーを創設しながら同じ女性を愛し、政情によって別々の道を歩むことになった2人の心の葛藤が次第に明らかになる……。ハンガリーの伝統舞踊をふんだん盛り込んだ重厚なドラマを撮り上げたのは、ハンガリー出身で、『アポロ13』や『天使と悪魔』などハリウッド映画で俳優として活躍しているアンドレ・ヒューレス。
「作品の成り立ちから言うと、まず同じタイトルの舞台版をブダペストの国立ダンスシアターで上演し、ツアーも行いました。ハンガリー中のダンスカンパニーを見て、このカンパニーを使うことを決めたんです。ですからダンサー役はダンサーが演じています。メインの女優は2人とも、女優であり、プロのダンサーでもあります。キャスティングに関してはこれ以外には考えられない人が揃い、本当にラッキーでした」。
息をのむほどに美しく力強いダンスシーンを撮影したのは、『未知との遭遇』でアカデミー賞を受賞した名匠ヴィルモス・ジグモンド。ジグモンドもハンガリー出身であり、ヒューレス監督とは20年来の知り合いだという。
「私も彼の作品に協力しているし、前作では製作総指揮も担当してもらいました。彼は世界最高の撮影監督の1人であり、ハリウッドで仕事をしているだけあってギャラは高いんですが、脚本を読んでもらって話し合い、結局半額に落ち着きました(笑)。彼と仕事ができたことは非常に光栄に感じています」。
日本でどのような反応が得られるか楽しみにしていたという監督。日本にも似た話があるという感想を聞き、「遠く離れた国でも人間は同じであり、歴史は繰り返すということは興味深い」と満足したよう。
「共産主義に反発し祖国を出ざるを得なかった兄と、体制の中で生きることを選んだ弟。私はこの作品でどちらかの側についたり、観客にイデオロギーを押し付けたりしたくありませんでした。ある種の親密さや思考は、言葉にすると嘘になってしまう。そういったものを、言葉を使わずに説明できるのがダンスです。ダンスを使って感情のもうひとつの層を描きたかった。ダンスは人生のアレゴリーなんです」。
『死と乙女という名のダンス』は、18日(水)14:00から映像ホールでも上映される。