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【デイリーニュース】 vol.23 地域発信映画『花の兄』 島春迦監督 Q&A
島春迦監督、地元・寄居の協力に感謝
『花の兄』の島春迦監督(右)と土川勉SKIPシティ国際Dシネマ映画祭ディレクター(左)
映画祭は6日目。関連企画となる地域発信映画『花の兄』が20日(木)、HDスタジオにて上映された。
母(熊谷真実)の不倫によって家庭が壊れ、非行を繰り返していた少年(安藤瑠一)。慕っていた父も少年院にいる間に病死する。出院後、保護司に仕事を紹介されて赴くと、それは親と暮らせない子どもたちが身を寄せる児童養護施設「ファミリーホーム」の料理番だった……。埼玉県寄居町を拠点に製作された。
上映後のQ&Aには、鹿児島県種子島出身で寄居町在住の島春迦監督が登壇した。脚本家として活動し、文学座で上演された戯曲「苺ジゴロと一日花」(92)で文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を受賞。『馬毛島クロス』(12)で映画監督デビューし、本作は監督3作目で、熊谷真実、ブラザートムらプロの俳優を起用した初の商業映画となる。
題名については「日本人にとって、花といえば、サクラですね。そのサクラの前に咲く梅のことを『花の兄』と呼ぶそうです。その主人公の少年が、お母さんがやっているファミリーホームにやってきて、自然とお兄さんの立場に置かれたことで、ちょっと成長していくという物語です。『花の弟』と言われる菊が咲くまで撮影し、季節感を出しました」と明かした。俳優が出演した撮影は約1カ月だが、実景部分は3〜8月までに及んだという。
監督は京都の大学を中退後、演劇のために上京。演出家の下で戯曲を書くなどしてキャリアを積み、約3年前に寄居町に移り住んだ。「寄居は緑が多いでしょ。以前は熊谷市に住んでいたのですが、ちょっとした距離なのですが、圧倒的な緑なんですね。その自然と街が融合した感じが気に入って、製作拠点に決めたんです」と島監督。
苦労した点については「子どもの演出です。みんな素人だったので、半年間、公民館を借りて、リハーサルをしました。舞台となるファミリーホームは児童養護施設と里親の中間的な役割の存在で、全国に何百カ所かあり、2万何千人が暮らしているそうです。実際には、寄居にないんですけども、『ホントにあるんですか』と聞かれましたので、リアリティが出たのかなと思いました」と話した。
舞台となったファミリーホームは約20年前に廃校になり、現在は生涯学習の拠点になっている旧寄居小学校風布分校。「寄居町がただで貸してくれました。普通はお役所の手続きは難しいんですけど、スムーズに撮らせてくれました。地元のキャストは、ボランティア。近所のおばちゃん、おねえさんに、スタッフが『やらない?』とスカウトしました。みんな、好きで出るわけなので、生き生きとしてやっていただきました。『次はセリフちょうだい』とリクエストもありました(笑)。寄居の人は臆することないので、向いているんじゃないかな。上映会でも受付をしてくれたり、随分助けられました」と地元の協力に感謝した。
映画は昨年11月から埼玉・深谷市の「深谷シネマ」で先行上映を行い、約5000人を動員。「地元しか映っていないので、地元びいきでご好評をいただいた。改めて見ると、ドキュメンタリー的な部分もあり、リアリティは出せたかなと思いますが、物語の展開には課題が残ったかなと思いました」と振り返った。
次回作は『おくれ咲き』。職業紹介所を舞台にした物語で、埼玉ゆかりのキャストを起用し、来年3月に寄居、秩父市、深谷市などで撮影予定。「もっと台本を練り上げて、面白い映画を作りたいと思っています。来年は間に合わないのですが、再来年、映画祭に参加したい」と意気込んだ。