ニュース
【デイリーニュース】vol.03 『ロケットマンの憂鬱』バラージュ・レンジェル監督 Q&A
旧ソ連の宇宙開発をめぐる奇想天外なコメディ
『ロケットマンの憂鬱』のバラージュ・レンジェル監督
ジャパン・プレミアとなった国際コンペティション部門の出品作『ロケットマンの憂鬱』は、旧ソビエト連邦による宇宙開発を風刺したハンガリー発の新感覚コメディ。メガホンを取ったのはハンガリー出身のバラージュ・レンジェル監督だ。
物語の舞台は1957年。ソ連は同盟国ハンガリーに世界初の宇宙飛行士を選ぶ権利を与える。その候補者に選ばれたのは、空を飛ぶことに人生を捧げた少数民族ロマの青年だった……というストーリー。宇宙飛行士のガガーリン氏、犬のライカよりも前に宇宙に送られた男がいたという奇想天外な物語は、共同脚本のバラージュ・ロヴァシュ氏とともに、監督が書き上げた。
レンジェル監督は国際的にも高い評価を得たHBOヨーロッパ製作のTVシリーズ「Golden Life」(15〜18)で数話の脚本を担当し、その力量はすでに知られているが、本作が長編映画デビュー作。2018年のワルシャワ国際映画祭フリー・スピリットコンペティション部門でプレミアされ、エストニアのタリン・ブラックナイト映画祭やプラハ国際映画祭(FEBIOFEST)などでも上映された。
レンジェル監督は、旧ソ連を風刺した映画を作った理由について、「ハンガリーが社会主義から脱却していくのを子ども時代に経験しました。子どもながらに、滑稽で、お粗末だと思いました。その頃に感じた滑稽な部分と怖い部分を、いつか映画にしたいと思っていました」と語る。
劇中ではガガーリン氏や、後に最高権力者となるブレジネフ氏も登場するが、宇宙開発をめぐる話は監督らによるフィクション。「ソ連が初の有人宇宙飛行を成し遂げたのは事実です。宇宙開発はトップシークレットでしたが、ガガーリンが宇宙に行く前に何人かが送り込まれたようです。ライカ犬が、一匹目の犬ではなかったという話もありますが、真偽のほどは分かりません。サルなどが送られたのが分かっています」。主人公をロマの青年にしたことについては「ロマが最初の宇宙飛行士になるのは、ありえないことです。それは今日の状況でも同じであると思ったのです」と語った。
エンドロールには「父親の記憶に」と献辞がクレジットされているが、「父は静かで強い人でした。様々な形で私をサポートしてくれました。しかし、この映画の撮影前に他界してしまったのです。世の中には人の役に立っているのに、世間に知られていない人物はたくさんいます。私の父も、そんな一人ではないか、と思ったのです」と明かした。
『ロケットマンの憂鬱』の次回上映は7月18日(木)11時から映像ホールで行われ、ゲストによるQ&Aも予定されている。