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【デイリーニュース】vol.08 『陰謀のデンマーク』ウラー・サリム監督 Q&A

衝撃のラストを見逃すな! デンマーク発、ポリティカル・サスペンス

陰謀のデンマーク』のウラー・サリム監督

 

国際コンペティション部門の上映作品『陰謀のデンマーク』は、デンマークの作品だ。監督・脚本を務めたウラー・サリムは1987年デンマーク生まれだが、両親はイラク人移民。昨年デンマーク国立映画学校を卒業し、本作のプロデューサーであるダニエル・ミューレンドーフと共に制作会社を設立。短編映画では多くの受賞歴を誇り、本作でついに長編劇映画デビューを飾った。

 

コペンハーゲンの地下鉄で爆弾テロが起こる。それから1年、移民排斥を唱える極右政党が支持を伸ばし、選挙での勝利、党首の首相就任がささやかれている。一方で移民や難民、ムスリムなどに対する嫌がらせや襲撃が頻繁に行われ、それに力で対抗すべきというグループも現れてきた。19歳のザカリアもそんなグループの一員となり、先輩のアリから襲撃の訓練を受けるのだが……。移民排斥と極右の台頭という社会問題を背景に、意外な展開を見せていくポリティカル・サスペンスである。

 

上映後のQ&Aには監督・脚本のウラー・サリムが登壇した。ラストは衝撃の展開をする作品なので、つい質問してしまいたくなるが、そこはこれから観る方のために伏せておきたい。代わりにこのラストに向かって進む監督の意図を聞くと、

「現在、多くの国で極端な意見が広まり、それがまるでノーマルな意見、正しいことのように感じている人が増えています。それに伴い、まともな人が“ノーマルであること”を見失っているように思い、それに気づいてほしいというのがメッセージです。映画は極端な方法をとるように描かれていますが、それは観た人に、もっといいほかのやり方があるのではないかと考えてもらいたいから。この方法しかないと描きたかったわけではありません」

 

舞台は現代のコペンハーゲンではあるが、一瞬映る年号は「2024年」。そこに気づいた方が監督に確認した。

「よく気づいてくださいましたね。そうです。これは2024年、5年後の物語です。あくまでもフィクションなのだと言いたかったのです」

 

その答えを受けて、5年後と言わず今すぐにでも起こるのではないかという感じがしたが、監督はどう思うかとの問いに

「実はこの企画は僕が映画学校に入る前、6年ほど前から考え始めたものなのです。そのとき脚本コンサルタントに相談したら『誇張しすぎだ』と言われました。それから映画学校に入って、準備を進め、2年前から制作に取り掛かったのですが、今度は『リアルすぎる。あまりに社会状況に近すぎるのではないか』と言われました」

 

続けて、「今、ヨーロッパの各地で実際にテロが起きています。人々はそれに嫌悪感を持ったり、不満を感じたり、フラストレーションをためていきます。それが極右的な政治家の台頭を許すのです。それなら、そんな彼らが感情に任せて暴走するところを描いてみようと考えたのです。映画の中で極右政党の政治家が発言している言葉のうちいくつかは実際に政治家が話した言葉を引用しています。本当はもっと引用したい言葉があったのですが、あまりにも人間性を疑うような発言だったのでさすがに遠慮しました」

 

さらに、「この映画は3カ月前にデンマークで公開され、評判もいいのですが、ある政治家は議会でこの作品を問題視して取り上げました。それは、引用した言葉の中に彼の発言が入っていたからです。まあ、議論になって、話題になれば、こちらとしては願ったり叶ったりだと思って放っておきました」

 

各地の国際映画祭にも招待され、好評を得た作品のジャパン・プレミア。ラストまで目が離せないポリティカル・サスペンス。

 

陰謀のデンマーク』は、7月16日(火)11時から映像ホールで2回目の上映が行われる。上映後はゲストによるQ&Aも予定されている。