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【デイリーニュース】vol.10 『バッド・アート』脚本・主演タニア・レイモンド監督 Q&A
アートにはダメも良いもない。それは誰にも決められない
『バッド・アート』のタニア・レイモンド監督
国際コンペティション部門に出品された米映画『バッド・アート』は、他人名義の絵を描くことで収入を得ていた無名画家が、いきなり作品が評価され、多くのバイヤーに翻弄されながらもアーティストとしての誇りと向き合う風刺コメディ。スプレーアート作家のジオ・ゼッグラーと共同で脚本・監督を務め、主演も兼ねた女優のタニア・レイモンドが上映後にQ&Aを行った。
レイモンドは、現在Amazonで配信中のドラマ「弁護士ビリー・マクブライド」に出演するなど女優業の一方で、脚本家やMVの監督としても活動。今作は、「(ゼッグラーと)目標は共通していて、アートは大好き、でもアート業界の在り方には疑問を持っていて大嫌い。それを表現したかった」と意欲的に取り組んだオリジナル作品だ。
映画の中に登場する多彩な絵画はすべてゼッグラーが手掛けており、レイモンドは「(自身が演じた主人公の)ジョルダナの経験に呼応するよう、抽象画からギッシリ詰まった感じのもの、最後にはミニマリストな絵画へと移行していった」と説明。その他の2人の役割分担については、「私が会話のやりとりを中心に、不条理なキャラクターたちの設定に注力し、ジオは美術批評などの部分に力を入れた。お互いがいなければ成り立たない作品だった」と満足げに振り返った。
観客からは、「絵ばかり見てしまって、もうちょっとコメディ要素があれば良かった」という感想も出たが、「何人かに同じ意見を言われたわ。私も同意見よ」と笑顔で対応。その上で、「リアリズムと演劇性の間を探った結果、このような形になった。でも、アートへの批評はしばしば、とんでもないものが多い。そんなところを笑っていただけたら」とアピールした。
今作に主演したことで、「女優は演技をどう受け止められるかを常に気にするものだけれど、他の人がどう思おうが気にせず、勇敢に自分のやりたいことやるということを学んだわ」と強調したレイモンド。そして、「将来的にはこの作品を舞台にしたいと思っている。毎回違うアーティストを起用してツアーをしたら、格好いいものになる。ダメなアート、良いアートのどちらも存在しない、誰も決められないということが際立つと思うの」と壮大な展望を明かした。
『バッド・アート』の次回上映は、7月18日(木)17時から多目的ホールで行われる。