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【デイリーニュース】 vol.02 『リトル・ハーバー』 カタリーナ・クルナーチョヴァー プロデューサー Q&A
観客に開かれた原作とは違う幻想的で美しいラストシーンを
『リトル・ハーバー』のカタリーナ・クルナーチョヴァー プロデューサー
昨日、開幕したSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2017は2日目を迎え、いよいよコンペティション部門参加作品の上映が始まった。最初の上映を飾ったのは、スロヴァキア、チェコ合作の『リトル・ハーバー』。監督のイヴェタ・グローフォヴァーは、長編デビュー作『Made in Ash』(12)がアカデミー賞外国語映画賞のスロヴァキア代表に選ばれ、本作では2017年ベルリン国際映画祭のジェネレーションKプラス部門で最高賞であるクリスタル・ベア賞を受賞するなど、国内外で大きな注目を集めている。
家庭環境に恵まれない孤独な少女ヤルカ(ヴァネッサ・サムヘロヴァー)は、彼女を置いて家を出ようとした母を追いかけて行った駅で、見知らぬ女性から双子の赤ん坊を押しつけられる。ヤルカは大人に相談しようともせずに、唯一の友人である少年クリスティアン(マトゥーシュ・バチシン)とともに人目につかない小屋で双子を育てようとするのだが……。
上映後のQ&Aには、プロデューサーのカタリーナ・クルナーチョヴァーさんが登壇した。スロヴァキアの地方の町が舞台になっている本作は、スロヴァキアとチェコの合作。1992年にチェコスロヴァキアがふたつの国に分かれて以降、両国の関係はどのようになっているのだろう。
「国の分離は政治家たちが決めたことで、一般庶民は望んでいませんでした。でもチェコもスロヴァキアも言葉が近く、映画や音楽など文化は自由に行き来しています。ですから2カ国の共同製作も自然な流れでした」
子どもたちだけで赤ん坊を育てようとするという衝撃的な物語は、冒頭の字幕で説明されるように、実話がもとになっている。
「以前、10歳の女の子が他人の赤ちゃんの世話を数日間していたという事件があり、その新聞記事にインスパイアされて書かれたスロヴァキアの有名な小説が映画のもとになっています。原作は3つの違う視点から描かれていますが、少女の視点から描いた部分だけを映画化しました。子ども向けに作った作品ではないにもかかわらず、ベルリン国際映画祭で子どもたちが選ぶジェネレーションKプラス部門の最高賞をいただいたのは、嬉しい誤算でした」
だらしない母親に対して愛憎入り混じった複雑な感情を抱いているヤルカと、過保護な両親に縛られているクリスティアン。このふたりを演じた子役たちが素晴らしい。
「ヤルカ役はエージェントを通して探したくなかったので、各地の学校やサマーキャンプ、スポーツクラブなどを回りました。そこで見つけた200人ほどの候補者をまず50人に絞り、10人に絞り、最終的に残った2人からヴァネッサを選びました。クリスティアン役の少年は対照的で、サマーキャンプで一目ぼれした彼に即決でした。演技経験のなかったヴァネッサは撮影の直後『もう演技は二度とやりたくない』と言っていたんですが、この作品で2つの演技賞を受賞し、今では演技を本格的に学ぼうとしています。きつくて長い撮影がトラウマにならなくてよかった(笑)」
赤ん坊を連れたヤルカとクリスティアンの逃避行の行方は……?
「エンディングは原作とは違うものになっています。観客に開かれたものにしておきたかったんです」
幻想的な映像が美しいラストシーンは、ぜひ映画祭の次回上映でご確認を。『リトル・ハーバー』は、7月19日(水)17時30分より多目的ホールにて上映が行われ、ゲストによるQ&Aも予定されている。