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【デイリーニュース】 vol.24 特集〈飛翔する監督たち〉『神奈川芸術大学映像学科研究室』 坂下雄一郎監督 Q&A
大阪芸大での助手経験を映画化「意外と気に入ってもらえたみたいです」
『神奈川芸術大学映像学科研究室』の坂下雄一郎監督
映画祭6日目。特集「飛翔する監督たち」の1本『神奈川芸術大学映像学科研究室』が20 日(木)、映像ホールで上映された。
神奈川芸術大学映像学科の助手・奥田は、ある晩、学生が機材を盗み出す現場に遭遇する。事件の発覚を恐れた教授陣は、奥田に隠蔽を命じるが、ウソの報告書をきっかけに事態は思わぬ方向へと進んでしまう。2013年の本映画祭長編部門で審査員特別賞を受賞。SKIPシティDシネマプロジェクト第4弾作品にも選ばれ、2014年1月25日に劇場公開された。
上映後にはQ&Aが行われ、商業デビュー作『東京ウィンドオーケストラ』が今年1月に劇場公開され、次回作『エキストランド』の製作も発表された新鋭・坂下雄一郎監督が登壇した。本映画祭への4年ぶりの凱旋に「こういう機会がないと、なかなか上映されないので、ありがたいです」とまずは第一声。
坂下監督は大阪芸術大学を卒業後、同大で2年間、副手(助手)を務めた後に、神奈川県横浜市にある東京藝術大学大学院映画専攻に入学。本作はその修了制作として作られた。「卒業した時は27歳くらい。“これでどうにかしなきゃいけない。とにかく、面白い作品を作らなきゃ”と思っていた。オリジナルには自分のことが反映されていなければ、と思っていました。大阪芸術大学で2年くらい働いていたので、映画化できる体験はそこかな、と。それに、映画祭へのほかの出品作の題材とも被らないだろう、という浅はかな思いもありました」と当時の心境を明かした。
劇中では、信じられないような珍事が連鎖的に起こるが、実際の出来事なのか? 「割と近いことが頻繁に起こるんです。学生が『ぴあフィルムフェスティバル』で賞を獲って、垂れ幕を作ったこともあります。半分以上は実際に起こったことですね」と坂下監督。公開後の大阪芸術大学関係者の反響について聞かれると、「作った時はまさか大阪では上映されないだろうと思っていましたが、大阪でも上映されました。でも、大学の人に怒られることはなかったです。意外と気に入ってくれたみたいです」と話した。
その後、『東京ウィンドオーケストラ』で商業デビューするが、環境の違いはあまり感じなかったという。「『神奈川芸術大学映像学科研究室』のスタッフは全員学生で、ギャラは出ません。『東京ウィンドオーケストラ』ではギャラが出たくらいでしょうか。スタッフはそれまでやってきた人と初対面の方が半々。基本的な撮影方法に戸惑いはなかった。企画段階からオリジナルで、内容に指定もなかった。いろいろと厳しい人もいましたけども、そういうものだと思っていましたから、心が折れるほどではなかった」とひょうひょうと答えた。
今回のコンペティション部門の審査委員長は、東京藝大大学院時代の担当教授だった黒沢清監督。「(今回のエントリーだったら)絶対、賞はくれないと思います。(黒沢監督は)複雑な感じなんです。講評会で、けなしはしない。言ってほしいところは言ってくるんだけども、皮肉にも聞こえてくる。不思議な語り口なんです。劇場公開のときには、いい感じのコメントをくれました」と話した。今後も、オリジナル脚本での新作の企画が進行中。コミック原作の映画が多い昨今の映画界にあって、新風を巻き起こしてくれそうだ。
次回、特集「飛翔する監督たち」では、21日(金)14時30分より『チチを撮りに』を上映。Q&Aには中野量太監督が登壇する予定。