2012 総括
今年9回目を迎えたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2012。世界各国からの新作映画と、日本のデジタルシネマを担っていく新進気鋭の映像クリエイターの作品を数多く上映し、映画祭関連イベントも多数行われました。
オープニング作品は、前・東京都知事の石原慎太郎氏原作の短編集「生死刻々」の一編で、神秘の樹海を舞台に、純愛を貫いたある男女の儚くとも美しいストーリーを、今回初めてデジタルでの映画制作に挑んだ新城卓監督による『青木ヶ原』を上映。2013年劇場公開の新作をどこよりも早く上映し、監督・主演の舞台挨拶もあり、満員のお客様に埋め尽くされた会場で、華やかに初日の幕を切りました。
コンペティション部門では、世界84の国と地域から長編571本、短編159本の計730本の応募があり、合せて27作品が上映されました。長編部門では、今年は家族をテーマにした作品が多いのも特徴であり、どれも様々な視点から捉えた秀逸な作品が上映されました。また、短編部門も回を重ねるごとに作品のクオリティーが高くなってきており、例年よりも1プログラム3作品増やし、5プログラム15作品のバラエティに富んだ内容となり、多くの方々にご来場いただきました。
長編部門では、オーストリアの新鋭・ウムト・ダー監督によるウィーンに暮らすトルコ人一家に嫁いだ若い女性が直面する古い因習による苦悩を描いた作品『二番目の妻』が見事、最優秀作品賞に輝きました。また、本映画祭はじまって以来の快挙ともいえる、日本人監督作品による監督賞受賞となった中野量太監督の長編初監督作品『チチを撮りに』は、SKIPシティアワードとのW受賞という快挙を成し遂げました。更に、若手映像クリエイター育成のための劇場上映支援事業「SKIPシティDシネマプロジェクト」第3弾作品にも選出され、2013年の劇場公開が決定しました。
短編部門の最優秀作品賞には、日本におけるミュージカル映画の新しい位置づけを確立していきたいという思いから挑戦したという角川裕明監督のミュージカル映画『ユメのおと』が獲得しました。
その他の上映として、毎年好評いただいているシネマ歌舞伎や迫力あるオペラの舞台を堪能できるLivespire、屋外イベントと連動した作品上映、目や耳が不自由な方も一緒に映画を楽しむことができる字幕・音声ガイド付きのバリアフリー上映、子どもも大人も楽しめる野外上映など盛りだくさんでお贈りしました。
また、様々な可能性を探る映像関連イベントも開催されました。コバトンTHEムービーの新作短編2作品の上映と、若手映像クリエイターの商業映画監督デビューを支援する『D-MAP2012』の製作発表が行われた「メイド・インSKIPシティ」、ヴェネチア国際映画祭からゲストを迎え、日本の新進監督が国際的評価を得るために必要なノウハウについて語られたトークイベント『JUMP!今、埼玉から世界へ』、子どもたちの映像制作を応援するプログラム『カメラクレヨン』など、多彩なプログラムが目白押しで、映画祭2012も盛況のうちに幕を閉じました。
※掲載の肩書きは当時のものです。