2022 総括
第19回を迎えたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭は、3年ぶりのスクリーン上映と、オンライン配信を併用した初のハイブリッド開催として、スクリーン上映は7月16(土)~7月24日(日)の9日間、オンライン配信は7月21日(木)~7月24日(水)の7日間にわたり開催しました。
本年のオープニング作品は、2018年『予定は未定』、2019年『ミは未来のミ』、2020年『コーンフレーク』と3年連続の受賞を果たした磯部鉄平の最新作『世界の始まりはいつも君と』をワールド・プレミアで上映しました。磯部監督は麻草郁原作の人気舞台を映画化した堂々たるエンターテインメント作品で凱旋を果たし、上映前の舞台挨拶には監督に加え、手島実優、根矢涼香、栗生みなら出演陣も登壇して映画祭の幕開けを華やかに飾りました。
本映画祭の中核であるコンペティションは、国際コンペティション、国内コンペティション(長編部門、短編部門)で構成されており、本年は99の国と地域から、合計935本の応募がありました。その中から厳正な審査を経て国際コンペティション10本、国内コンペティション長編部門6本、同短編部門8本を選出。国際コンペティションの審査委員長には女優の寺島しのぶ氏、国内コンペティションの審査委員長には撮影の芦澤明子氏を迎え、最終審査を行いました。
会期中には、国内外から監督、プロデューサーをはじめゲストも来場し、上映後のQ&Aセッションやトークイベントを行ったほか、来日の叶わなかった海外ゲストのインタビュー動画を上映するなど、制作者と観客との交流の場を設け、作品の理解を深めるとともに、映画祭を盛り上げました。
本年は2つの特集上映を実施しました。ひとつは、チャリティ上映「ウクライナに寄せて」と題し、過去の本映画祭コンペティションに選出されたウクライナ作品『この雨は止まない』と『ラブ・ミー』の2本をリバイバル上映。いずれも日本では劇場未公開作品であり、貴重な上映機会となりました。本企画で得た収入は、ウクライナ人道支援に役立てるため、日本赤十字社を通じて全額寄付いたしました。
もうひとつは、「What’s New~飛翔する監督たち~」と題し、過去の本映画祭にノミネートした監督たちによる最新作を、劇場公開に先駆けて全てワールド・プレミアで上映しました。オープニング作品『世界の始まりはいつも君と』に加え、2021年の国内コンペティション長編部門で優秀作品賞と観客賞をW受賞した萱野孝幸監督の『断捨離パラダイス』、2019年の同部門にノミネートした真田幹也監督の『ミドリムシの姫』を上映し、上映後には監督や出演者によるQ&Aセッションを行いました。
関連企画では、SKIPシティのほか、川口駅前の映像施設メディアセブンも会場に加え、合わせて4つの企画を行いました。「カメラクレヨン」では、彩の国ビジュアルプラザが実施する映像学習プログラムで子どもたちが制作した作品を上映し、アニメーションプロデューサーや監督による講評も行われました。
「メイド・インSKIPシティ」では彩の国ビジュアルプラザを拠点に活動するクリエイターが手掛けた3作品を上映。宝田明さんの遺作となった『世の中にたえて桜のなかりせば』上映後には、本作三宅伸行監督と、映画『燦燦 -さんさん-』で宝田明さんとタッグを組んだ外山文治監督によるトークショーを行い、若手作家とも精力的に作品作りに取り組んだ銀幕の名優を偲びました。恒例の「コバトンTHEムービー」では、2021年に制作された『彩の国 食文化の灯は消さない!』と、今年制作された『星屑家族』を上映。それぞれ、監督や出演者が上映後の舞台挨拶に登壇しました。日本語字幕と音声ガイド付きの「バリアフリー上映」では、昨年話題を呼んだ和島香太郎監督の『梅切らぬバカ』を上映、オムツ交換・授乳スペースを備え、ベビーカーのままで入場可能な「パパママ・シアター」では『娘は戦場で生まれた』を上映しました。
オンライン配信は、一昨年、昨年に続き動画配信サイト「シネマディスカバリーズ」の協力のもと、コンペティション部門の全24作品と、チャリティ上映「ウクライナに寄せて」の2作品を特設サイトで配信しました。
スクリーン上映最終日の7月24日(日)にはクロージング・セレモニーを開催し、コンペティション各賞の発表・授与を行いました。国際コンペティションでは、フランス映画『揺れるとき』(サミュエル・セイス監督)が栄えある最優秀作品賞(グランプリ)に輝きました。監督賞はフランス、ドイツ合作『マグネティック・ビート』(ヴァンサン・マエル・カルドナ監督)、審査員特別賞はボリビア、ウルグアイ、フランス合作『UTAMA~私たちの家~』(アレハンドロ・ロアイサ・グリシ監督)が受賞しました。また観客投票によって選ばれる観客賞は、フランス作品『彼女の生きる道』(セシル・デュクロック監督)が受賞しました。
国内コンペティションでは、長編部門で『ダブル・ライフ』(余園園監督/日本、中国)、短編部門で『サカナ島胃袋三腸目』(若林萌監督/日本)が優秀作品賞に輝きました。また観客賞には長編部門で『ヴァタ ~箱あるいは体~』(亀井岳監督/日本、マダガスカル)、短編部門で『ストレージマン』(萬野達郎監督/日本)が選ばれました。さらに国際コンペティション、国内コンペティションを通じた全ての日本作品を対象に、今後の長編映画制作に可能性を感じる監督に対して授与するSKIPシティアワードには『Journey』(霧生笙吾監督/日本)が選出されました。
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022は、スクリーン上映の来場者数が4,227名、オンライン配信の視聴回数が4,314回を記録し、盛況のうちに幕を閉じました。本映画祭は、これからも若手映像クリエイターの登竜門として、次代を担う新たな才能の発掘に取り組むとともに、観客の皆様により一層楽しんでいただけるよう、今後の発展に向けて取り組んでまいります。