国際コンペティション
野鳥観察員
The Warden | De Vogelwachter
- 配信日時
- 9/25(土)10:00 ~ 10/3(日)23:00
- シネマディスカバリーズ
老人は、その日もひとり野鳥を数える。
人生の優しさと哀しさが詰まった愛すべき佳品。
ほぼ半世紀に渡り、その観察員は大海の小さな島で、ひとり幸せに暮らしていた。しかしある日、彼の野鳥観察の仕事が廃止になると本部から知らされ、彼は何とかこの事態を食い止めようとするのだが...。
©Mark de Blok
監督:テレース・アナ
出演:フリーク・デ・ヨング、ソフィー・ヴァン・ウィンデン、クィア・シルー、ニック・ゴルターマン、ヴァウター・ヤンセン
2020年 / オランダ / 89分
広い海岸線にポツンと建つ掘立小屋。老人にとって、野鳥の数を報告し、大好きなサッカーの結果を聞く、本当にそれがすべての世界。しかし、突然のポジション閉鎖の報告を受け、およそ半世紀もの間続けてきた、ささやかで幸福な日常が脆くも崩れ去ろうとした時、はたして人はどう反応するのか。ほとんど一人芝居のような小さな作品ながらも、壮大なメッセージを含む作品を監督したのは、映画のみならず、演劇や小説の世界でも高い評価を得ているテレース・アナ。サン・セバスティアン国際映画祭に出品された前作の『Silent City』(12)でも、魚の調理を学ぶためにヨーロッパから東京にやってきた女性が募らせる孤独感を描いていたが、本作も老人の細やかな心情描写が胸を打つ。その老人を演じたフリーク・デ・ヨングは、Neerlands Hoopというコメディパフォーマンスのグループで活躍し、解散後もTVショーのホストなどで人気を博したオランダのベテランスターである。
監督:テレース・アナ
オランダの演劇、映画、文芸の三つの分野で活動する、監督・脚本家。1989年から1999年まで、国際的な演劇集団Dogtroepの芸術監督を務め、世界中で披露された、50を超える舞台パフォーマンスの脚本、演出を手掛けた。そのうちのひとつ、200万リットルもの水を使用する圧倒的な演目「Noordwesterwals」の映画版の制作をしたことがキャリア変更の始まりとなり、2007年のサン・セバスティアン国際映画祭でプレミアされた映画脚本・監督デビュー作『The Bird Can’t Fly』は数々の賞を受賞した。2012年の監督第二作『Silent City』も同映画祭でプレミアされた。また、7冊の小説を出版し、ベストセラーとなった「Waiting for the Monsoon」は複数の言語に翻訳されている。ほかに、コラムや短編小説の執筆、ドキュメンタリーの制作も行っている。
メッセージ
私は、静寂と無を渇望することがしばしばあります。この世界が飽和状態になってくればくるほど、私は人、車、騒音のない世界を求めてしまいます。もちろん、そのような場所はほぼ存在しないので、それを映画の中で作りだしました。ひとりの男が自然の中で幸せに暮らす、人里離れた島です。しかし脚本を書き始めたとき、もはや、まったくの自然な場所というのは存在しないことに気づきました。この映画のために、私は自宅近くのビーチに打ち上げられたプラスティックや流木を拾い集め、それには4年がかかりましたが、これは映画のすべてのセットを建てるよりも長い時間でした。