ゲストインタビュー
国際コンペティション受賞者
<最優秀作品賞、観客賞> 『ザ・タワー』 パトリス・ネザン(プロデューサー)
― 受賞のお気持ち
我々はアニメーションを専業としているわけではなく、映画を作る会社なんだという意識で、現代の社会を描き、それをお見せすることをポリシーにしています。ですから、いわゆる区分ではアニメーション作品であっても、ほかの実写長編と同じように選定していただいたことはとても嬉しいです。力強い、心に訴えかけるようなストーリーをお客様に届けたいという思いに突き動かされて映画を作っているわけですが、本作は題材が難民ということで、パペットアニメーションだからこそ、観客により身近なものとして物語ることができたことを大変嬉しく思っています。
― 日本の観客の反応はいかがでしたか?
日本の観客にはどのようにして受け取られるのだろうかと考えていました。というのは非常に特異な、地政学的な問題をはらむテーマを描いていますので。また、もうひとつ、記憶というものが世代から世代へどのように受け継がれていくのかといったテーマを描いています。こういった映画に非常に普遍性があって、日本の観客の皆さんにも深く伝わったんだという実感がありました。我々は日本のアニメや漫画の影響を非常に深く受けていて、おそらく漫画、アニメというのは世界の普遍的な言語なんだろうと考えていたんですけれども、今回見事にそれが実証されたようで、とても嬉しいです。
― 今後の活動や展望について
プロデューサーとしてイラクの監督による映画を制作しています。20年間亡命生活を送っている人物を描いているのですが、観客に見せたいのは、紛争地帯での生活がどのようなものなのかということです。紛争地帯についてはニュース映像ではよくご覧になると思うんですけれども、ニュースとして消化するに留まってしまうのではなく、生身の人間がそこで日々生活しているんだということを見せたいという思いがあります。マッツ・グルードゥ監督については、彼は映画という媒体を使って、世の中で巻き起こっている諸問題に関わりたいという方で、アクティビストなんです。彼の次のプロジェクトは我々も共同制作として携わっていますが、アフリカにおける石油事情の話です。いかにアフリカの石油にヨーロッパの企業が浸食しようとしているかという現状を描いていて、アフリカのいまの現状に対して我々も責任を負っているのではないだろうかと問いかける映画になります。
<監督賞> 『イリーナ』 ステファン・キタノフ(プロデューサー)
― 受賞のお気持ち
とても嬉しいです。今回、日本へ来るのは初めてで、北野(武)監督と一文字違いの「キタノフ」としては格別な思いがあります。ですので、日本の観客の皆さんと『イリーナ』を共有することができてとても嬉しく思います。ブルガリアといえば、皆さんは大体、琴欧州やヨーグルトを連想すると思うのですが、願わくは、その3番目には、「ブルガリアといえばブルガリア映画」となれればと思っています。
― 日本の観客の反応はいかがでしたか?
今回、私は観客と一緒に上映を見ることはできず、最後のクレジットが流れるところで入場させてもらったんですけれども、観客から良い意味での緊張感が伝わってきて、ほぼ満席という状態で、皆さんちゃんとQ&Aまで残ってくださったので、プロデューサーとしてとても嬉しい気持ちになりました。なにせ一つの作品を仕上げるのに、何年もかけて、やっと観客のところへ持っていくわけですから。Q&Aではとてもレベルの高い、知的な、そして正確な質問が多くて、非常に感心しました。
― 今後の活動や展望について
ナデジダ・コセバ監督のファーストネームは“希望”を意味するそうですから、私のプロデューサーとしての希望は、コセバ監督の今後の作品が『イリーナ』と同じくらい成功を収めることができればということです。『イリーナ』もいろいろなところで注目を浴びていて、世界各国の映画祭を回っています。SKIPシティでの受賞はおそらく17回目の受賞、また監督賞としても2度目の受賞になりますので、今回長編デビューを飾った監督にとってはとても嬉しいことなのではないかと思っています。
<監督賞> 『陰謀のデンマーク』 ウラー・サリム(監督)
― 受賞のお気持ち
受賞を期待して映画祭に参加しているわけではありませんので、毎回驚きなんですが、今回監督賞を受賞することができて、とても嬉しい思いでいます。僕はいわゆる若手の映像作家ですから、受賞というのは非常に励みになります。
― 日本の観客の反応はいかがでしたか?
観客の皆さんに響いたようでとても嬉しい気持ちでいます。ご覧になったお客さんはあれこれ疑問が浮かんだり、いろんな感情が呼び覚まされたり、様々な方法で振り返ったりしていたようですが、そういった皆さんの反応が、デンマークやオランダで上映したときの反応と似ていて、つくづく映画という言語は歴史的背景や文化や国の垣根を越えて、皆に普遍的に伝わるものなんだなと思いました。
― 今後の活動や展望について
いま目下制作中の映画がありまして、今回『陰謀のデンマーク』では恐怖や憎悪を描いていますが、それと真逆のことをやりたかったので、新作では愛と悲しみを描いています。この作品も『陰謀のデンマーク』と同じように、日本の皆さん、世界の皆さんに響く作品になればと思っています。
国内コンペティション受賞者
<優秀作品賞(長編部門)> 『サクリファイス』 壷井濯(監督)
― 受賞のお気持ち
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭に僕も一週間以上通って楽しませていただいて、すごく多様性に富んだ映画祭だなと思いました。外国人の子ども日本人の子どももいて、お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃん、障碍のある方ない方がいて、そういった中で自分の映画を上映できるのはとても幸せなことだと思いました。初めての長編監督作が参加できたのがこの映画祭で本当に嬉しく思いました。
― Dシネマ映画祭に参加されてみていかがでしたか?
いろんな反応をたくさんいただけて、良いものも悪いものも、自分が作ったものに対してこんなにいっぱい言葉をいただけたことは初めてだったので、とにかくまた何か作る糧になる、そういう勇気をたくさんいただけました。本当に観ていただけて幸せでした。
― 今後の活動や展望について
物語や映画というのは、何か悪いことが起きた時にすぐに対処できる力があるものではないと思いますが、それからしばらく時間が経ってから来るものに対しては大きな盾となれるものだと思っています。そんな盾となる、誰かの人の心を守れるものを、どんなに辛くても、時間がかかっても、少しずつでも作っていけたらと思っています。
<優秀作品賞(短編部門)> 『遠い光』 宇津野達哉(監督)
― 受賞のお気持ち
荻上直子監督とお話しをしたんですが、「今までに見たことがなかった」という言葉をいただきました。僕が映画をやる根底にあるのは、誰も観たことのない光景だったり、人の動きだったり、そういうものを観て欲しいということなんです。それを少しでも、一人でも思っていただける方がいたということがとても嬉しくて、今後の映画作りに対してすごくモチベーションを保つというか、次に繋がることだなと思っています。
― Dシネマ映画祭に参加されてみていかがでしたか?
三池崇史監督が授賞式のときに仰っていたことがすごく共感できたんです。SKIPシティの前にもいくつか映画祭に参加したことがあるんですが、僕のように普段映画やドラマの現場でいちスタッフをやっている人間からしたら、やはりちょっと距離があって、正直映画祭というものにあまり良い印象を持っていなかったんです。けどSKIPシティに参加して、すごく個性的というか、本当にお客さんとの距離感が近い映画祭だと思いましたし、こういった場所で映画を上映できるのはとても貴重な経験だなと思いました。
― 今後の活動や展望について
まだ見たことのない風景だったり、まだ見たことのない人同士の会話だったり、そういったものを観客の皆さんに見て欲しくて映画を作っているので、今後もそういう作品を作っていきたいと思っています。まず次は長編を撮るということと、商業的にもきちんとデビューして、ということも考えています。日本の映画ってこんなにすごいものが撮れるんだっていうことを、もっと多くの人に感じてもらえるような作品を撮れるように頑張っていきたいと思います。
<観客賞(長編部門)> 『おろかもの』 芳賀俊(監督)、鈴木祥(監督)
― 受賞のお気持ち
(芳賀)
映画というのは、僕らの方で出来上がったとしたとしても、まだ「完成」とはちょっと違うと思っていて、やはりお客さんに届けて、それで初めて映画は完成すると思っているんです。こういった形でお客さんに素晴らしい反応をもらえて、観客賞をもらえたっていうことが何よりも嬉しいです。
(鈴木)
僕は子どもの頃から映画を観て楽しむという体験をずっと続けています。お客さんに対して楽しんでいただける時間を提供したいなと、自分たちも映画を作って、憧れてきた監督たちのようなことができればと思っていましたので、今回観客賞という、観客の皆さんが楽しんだ時間というものをそれぞれ持ち帰って、賞をいただけたっていうのは本当にありがたいです。今後もこういった形で活動ができればと思っています。
― Dシネマ映画祭に参加されてみていかがでしたか?
(芳賀)
上映の環境が信じられないくらい素晴らしくて、映像もクリアで、音響も「こんなふうに音が聞こえるんだ」と作った本人が驚くくらい素晴らしい喜びに満ち満ちていて、お客さんも僕らが狙ったシーンで笑ってくださったり、涙を流しましたという感想をいただいたり、その反応がとても嬉しかったです。
(鈴木)
上映の時は僕もいち観客として観ていたんですが、お客さんと連帯感というか、こちらが狙っていたところで反応をいただいて嬉しかったです。展開がわかっていながら、自分でも笑ってしまったり、リアクションできたことは非常に幸せだし、貴重な、珍しい体験だったなと感じました。
― 今後の活動や展望について
(芳賀)
僕らは二人とも子どもの頃から『ターミネーター2』が大好きで、そういった世界中の人に届けられるような、史上最高の娯楽映画を作れたらとても嬉しいなと思っています。
(鈴木)
ジェームズ・キャメロンのような監督を目指して頑張っていきたいと思います。
<観客賞(短編部門)> 『歩けない僕らは』 佐藤快磨(監督)
― 受賞のお気持ち
題材が回復期リハビリテーション病院という、突然歩けなくなってしまった方々にリハビリをするセラピストと患者の物語だったので、正直、撮りながら、歩ける自分が撮るべきなのか、撮る意味はなんだろうということを悩みながら撮影してました。ですので、今回観客賞をいただいて、お客さんがこの映画を見て色々感じていただけたのかなというのが率直に嬉しいです。
― Dシネマ映画祭に参加されてみていかがでしたか?
自分が思っていた以上に、回復期リハビリテーション病院に携わる医療従事者の方々がたくさん来場されていて、「こういう部分がリアルでした」とか、そういった言葉をいただきました。一年弱、この映画の取材などで患者さんやセラピストさんにお話しを聞いてきたんですが、その日々がこの映画のワンシーンワンシーンに何か反映することができたのかなと思って、すごく嬉しかったです。今回、ほかの作品も観たんですけれども、様々なジャンルの映画があって、なにより若い監督たちとの出会いがこの映画祭でもまた新しくあって、色々とお話しすることもできて、作品からも刺激を受けることができました。
― 今後の活動や展望について
やはり映画を撮り続けることはすごく難しいことだなと思っていて、映画を撮り続けるために自分は何をしなければいけないのか、映画にできることをこれからもっと考えていきたいですし、勉強しながら映画を撮り続けていきたいと思います。
<SKIPシティアワード> 『ミは未来のミ』 磯部鉄平(監督)
― 受賞のお気持ち
去年、短編(『予定は未定』)で賞をもらえて、その時「長編で帰ってきます」と言って、まさか一年後とは思ってなかったんですが、でも去年の受賞のおかげで長編に挑戦しようと踏み出せたみたいなところがありました。そして長編を撮って、今年もノミネートできただけで光栄だと思っていたので、まさかまさかで何にも考えていないっていうのが正直なところです。キャストやスタッフ、そして八王子オールロケで撮ったんですが八王子の皆さんにすごく協力していただいて、その方々に良い報告ができるのはとても嬉しいです。
― Dシネマ映画祭に参加されてみていかがでしたか?
SKIPシティの映画祭はすごくあたたかいです。Q&Aに登壇して、皆で久々に集まれて、高校生の話なので控室も同窓会みたいになってて。今回がワールド・プレミアですし、賞までいただけて「ああ嬉しい」しかないです。
― 今後の活動や展望について
『ミは未来のミ』が初長編なので、なんとか劇場公開まで持っていきたいというのが一番近い目標です。SKIPシティにもまた帰ってこれたら嬉しいですし、長編をどんどん撮っていこうと、いまシナリオも準備しているので、この賞を励みにまた新作を撮ろうと思っています。