国内コンペティション 長編部門
B/B / B/B ◊ ワールド・プレミア◊
<2020年 / 日本 / 77分>
12人、全部私。
それぞれの人格を別々の俳優たちが演じる発想が面白い新感覚サスペンス。
2020年、担当大臣の汚職による東京オリンピック中止と新興宗教による毒ガス散布未遂事件。ふたつの大事件の影で起こったコンビニ経営者惨殺事件、通称「イカロス」。被害者の息子士郎と交流のあった紗凪は、刑事から取り調べを受けることになる。解離性同一性障害を患う彼女と彼女の中に存在する人格たちは、それぞれの視点から回想を始めるが…。
©中濱宏介
監督:中濱宏介
出演:カレン、中澤康心、西村風音、騎馬穂乃佳、ひと:みちゃん、佐波太郎、米倉愛
解離性同一性障害。多重人格障害という名前のほうが聞き馴染みのある、映画ではよく取り上げられるモチーフだが、本作は王道の多重人格サスペンスであるだけでなく、この要素をユーモアに昇華させている点が素晴らしい。監督、製作、脚本、編集を務め、また美術にも携わるなど、まさに一人で多重業務をやってのけた中濱宏介は今年大阪芸術大学を卒業、本作はその卒業制作となる。また、堀本陸と馬瀬みさきの二人による作曲家ユニットLantanのシャープで凄みのある音楽も特筆に値する。キャストに目を転じると、主演のカレンは昨年の本映画祭SKIPシティアワード受賞作『ミは未来のミ』(19)でヒロインを魅力的に演じていたが、ここでも目まぐるしく表情を変える難しい役どころを巧みに演じ分けている。本映画祭での上映がワールド・プレミアとなる。
監督:中濱宏介
北海道出身。大阪芸術大学映像学科卒業。大森一樹監督の下で映画演出を学ぶ。これまでの監督作品には、短編『The Boy Who Defecate With The MOBY-DICK』(17)、中編『SORROWS』(18)など。『SORROWS』は湖畔の映画祭2019で上映された。
メッセージ
この映画は大学の卒業制作として撮影しました。在学中は幾つかの短編、中編を作りましたが納得の行く作品には為りませんでした。本作にも勿論心残りや妥協点はありますが自分が目指している理想の断片に触れることはできたのかな、と感じています。「何度も繰り返し観たくなる作品」になるよう心懸けました。1度目は「物語」、2度目は「テーマ」、3度目は「話の筋と関係ない小ネタ」を楽しんで貰えたら嬉しいです。